久保建英10歳時の驚きエピソード 当時のコーチが語る3つの特徴「技術、思考力、メンタル」
元川崎フロンターレU-12監督・髙﨑康嗣氏インタビュー 後編
かつて川崎フロンターレU-12の監督を務めていた髙﨑康嗣さんに、現在のプロ選手の小学生時代を語ってもらう後編は、半年間携わった久保建英について。当時からの飛び抜けた思考力、強烈な負けず嫌い精神が伝わってくる数々のエピソードを紹介する。
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【あんな子は見たことがない】
幼少期の久保建英に接した指導者、関係者は、口をそろえて彼が特別な存在であることを語る。言葉の裏側には、驚きや感動、そして畏敬など、様々な感情が含まれている。
川崎フロンターレU-12時代に久保を指導した、髙﨑康嗣氏もそのひとりだ。
三笘薫(ブライトン)や板倉滉(シャルケ)、三好康児(バーミンガム・シティ)、田中碧(デュッセルドルフ)といった、のちの日本代表選手をジュニア時代に指導した名伯楽に「あんな子は見たことがない」と言わしめるのだから、いかに能力が突出していたかがわかる。
久保は小学4年生の時点で、2学年上のカテゴリー(U-12)に飛び級した。U-12を担当していたのが髙﨑だった。
久保に関して、髙﨑は「担当していたのはわずか半年ですし、僕が指導したという記憶は一切ない。勝手にうまくなっていった」と声を大にする。
「サッカーの能力に加えて、思考力も飛び抜けていたので、周りの6年生はタケ(久保建英)に従わざるを得ない空気ができていました。長く指導者をしていますが、あんな子は見たことがありません」
ミーティングで試合の映像を見ながら「この場面、どう思う?」と聞くと、真っ先に久保が発言して、的確に状況を見極め自分の考えを言うのが常だった。
「ミーティングでも練習でも、この状況はどうする? と聞くと、タケが『こうすればいいじゃん』と率先して答えるんです。『こうすればいいのに、なんでみんなやらないの?』と。そこで僕が『タケ、やっぱり気づいた? 答えが出ちゃっておもしろくないから、違う練習しよう(笑)』となる。いつもそんな感じでした」
久保は思考力が高く、「こちらが何か言わなくても、自分で工夫してプレーするマインドを持っていた」という。
「2学年上のカテゴリーでプレーしているから、体格差でふっとばされることもあるわけです。ただ、一度潰されたら、次からは絶妙なポジションをとってぶつからないようにする。それも相手から逃げるためではなく、抜くためのポジションをとっていました」
マークする相手の状況を観察しつつ、相手に体をぶつけられない距離とタイミングでボールを受け、瞬時に入れ替わる。体の大きな相手に対して、思考と駆け引きで上回る久保のプレーを、髙﨑は何度も見てきたという。
「タケの場合、そんなプレーが、セレクションに来た2年生の時からできていました。仲間がボールに群がって、密集していても、一人だけ違うところにポジションをとるんです。そして、ここぞのタイミングでボールを受けに来て、雨の濡れたグラウンドでもボールをピタッと止める。そのプレーを見た瞬間、思わず『これ以上、彼のプレーは見なくてもいいでしょう』と口にしたぐらいです」
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