37歳の大ベテラン・モドリッチを中心にカタールW杯に臨むクロアチア。選手寿命が延びた時代に起きた先駆的ケース (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by AFLO

つぶしの効く個人とチーム

 ユーゴスラビア時代から、「東欧のブラジル」と呼ばれるほど優れた選手を輩出してきた。独立してクロアチア代表になってからも1998年フランスW杯の得点王になったシュケルやロベルト・プロシネツキ、アリョーシャ・アサノビッチ、ズボニミール・ボバン、アレン・ボクシッチなど、ヨーロッパのビッグクラブで活躍した選手は数多い。

 前回ロシアW杯で決勝まで進んだメンバーも、ルカ・モドリッチはレアル・マドリード、イバン・ラキティッチはバルセロナ(当時)に所属していて、各ポジションに強豪クラブでプレーする選手たちを配していた。ほとんどの代表選手が外国のクラブに所属していること自体は珍しくないが、クロアチアはそのなかでも成功しているケースと言える。

 外国への選手、コーチの流出は、ボスマン判決でサッカー界の民族大移動が起こる以前からで、ポジションの偏りもない。ただ、移籍先で必ずしもエース格待遇というわけではなく、モドリッチのレアルにはクリスティアーノ・ロナウドがいて、ラキティッチがかつてプレーしていたバルサにはリオネル・メッシがいた。そうした境遇が選手を鍛え、代表チームを編成した時の強さにつながっている。

 チェルシーで活躍しているマテオ・コバチッチは、「モドリッチの後継者」と呼ばれた若手時代にレアルに所属していたが、バルサ戦でメッシをマンマークで封じたことがある。攻撃型のテクニカルなMFだが、こうした守備専門の仕事もこなす能力を持っているわけだ。また、時にはこうしたオーダーにも応えていなかければいけない立場でもあった。

 クロアチアには、こうしたつぶしの効くタイプが多い。イバン・ペリシッチは左右のウイングをこなせて、ウイングバックやサイドバックでもプレーできる。ロシアW杯で活躍したマリオ・マンジュキッチはバイエルンではCFだったが、ユベントスではサイドハーフもこなしていた。

 戦術的に最先端ではないが、各ポジションにつぶしの効くタイプを揃えているので、状況に応じて臨機応変に対応する力があり、ロシアW杯ではそれで際どい勝負を勝ち抜けることができていた。

 計画的というより即興的に4バックが5バックになったり6バックになったりしている。相手のシステムに応じて、つぶしの効く選手たちがシステムを変えて順応できる。古典的な4-3-3システムを基調としながら、システム自体もつぶしが効くのが特徴だった。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る