久保建英は若いチームでリーダーシップを発揮。ELで光った日本代表選手たち (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 中島大介●撮影 photo by Nakashima Daisuke

右からのカットインは強力な武器

「未来のレアル・ソシエダの中心選手」

 そう思わせるほどの異彩を放っていた。

 この日、久保は落ち着き払っていた。いい状態の時の彼は呼吸が深く、乱れがない。そのため、どんな動きにも対応し、相手の裏を取ることができる。そしてそれが信頼となって味方に伝わり、いいリズムを生み出せる。右で起点になって、ウルコ・ゴンサレスのパスを引き出し、ベニャト・トゥリエンテス、ホン・カリカブル、ロベルト・ナバーロといった若い選手を手足のように使った。

 81分には左からのクロスに対し、久保はファーポストに入ってヘディングで中央へ折り返す。するとプレゼントボールに走り込んだロベルト・ナバーロがダメ押し点を決めた。交代出場で敵の息の根を止める躍動だった。

 今シーズンの久保はトップの一角、トップ下での出場が増え、左に流れるプレーも格段に改善している。森保ジャパンでも左サイドで使われ、それが大発見のように言われるが、彼は本来どのゾーンでも、周りの選手とコンビネーションを作れたら怖さを出すことができる。ボールを持て、運べ、崩せる技術を持ち、周りと多様に連係することで無限の可能性を提示し、守備を撹乱できるのだ。

 そのなかでも、やはり右からのカットインは強力な武器である。左足でボールを突き、こねながら、シュートも含め限りないプレーバリエーションのなかで相手に脅威を与えられる。シェリフ戦で、あらためてそれを証明した。

 ひとつ言えるのは、久保をポジションの枠に閉じ込めないことだろう。彼のすばらしさは、流動的、継続的なプレーのなかで出る。変幻にこそ、価値はあるのだ。

 攻撃面の向上で、守備強度も増した。五分五分のボールで負けることが少なくなった。味方と連係し、挟み込んで奪い返すようにもなっている。今や、守備が弱点になることはない。ただし、彼をプレスの先兵として使い、体力勝負を求めるような戦術をとる監督だったら、猫に小判だろう。

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