エムバペがパリ・サンジェルマンで怪物に進化したポイントを風間八宏が発見。「足裏が見えない走り」とは?

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Getty Images

風間八宏のサッカー深堀りSTYLE

第8回:キリアン・エムバペ(パリ・サンジェルマン/フランス)

独自の技術論で、サッカー界に大きな影響を与えている風間八宏氏が、国内外のトップクラスの選手のテクニック、戦術を深く解説。第8回は、23歳にして現在、世界最高峰のプレーヤー、 パリ・サンジェルマンの日本ツアーでのプレーも楽しみな キリアン・エムバペを取り上げる。スピードスターから、ドリブルもシュートもスーパーな怪物に進化 しているが、その異次元の能力 を分析してもらった。

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体からボールが離れず、速い

 4年前に19歳でW杯優勝を経験すると、大会後のシーズンからは4年連続でリーグ・アン得点王。

 いまやフランス代表とパリ・サンジェルマンの絶対的存在として、また、世界で最も市場価値の高いプレーヤーとして、ワールドサッカーシーンの先頭を走り続ける数十年にひとりの逸材が、キリアン・エムバペだ。

 とりわけこの4年間の進化のレベルは異次元で、しかも23歳になった現在もプレーヤーとしての成長は止まらない。

パリSGでもフランス代表でも絶対的な存在に成長しているエムバペパリSGでもフランス代表でも絶対的な存在に成長しているエムバペこの記事に関連する写真を見る 果たして、エムバペの凄味はどこにあるのか。その傑出した才能は誰もが知るところだが、独自の視点を持つ風間八宏氏の眼にはどのように映るのだろうか。

「ひと言で言えば、怪物ですね。もちろん、とてつもなく足が速いことは誰もが知っているところですが、エムバペはスペースがない状況でも、ものすごく速い。だから、相手はエムバペが何をするかをわかっていても、簡単には止められません。要するに、わかっていても止められない選手。だから、怪物と表現させてもらいました。

 それと、最近のエムバペは、あの高速ドリブルのなかでもボールが体から離れなくなっています。10代の頃は、もっとボールが体から 離れた状態でプレーしていたので、ボールがエムバペのものではない時間がありました。ところが、ここ数年の成長のなかで、ボールを持ったら常にエムバペの時間になっている。こうなると、相手は飛び込むこともできませんし、一瞬で置き去りにされるだけになってしまいます。

 しかも、ゴール前で相手を外す動きも覚えたうえ、狭いスペースでもすべてが正確で速い。あれほど足が速くても、相手と競争はしていません。そういう意味では、単純に速い選手ではなく、ボールの動かし方や相手の動きを見極める能力など、すべてが揃っているスーパープレーヤーだと思います。

 正直に言って、私自身もエムバペの進化には驚いています。ただ、ここ数年はネイマールと プレーし、昨季からはそこにリオネル・メッシがチームメイトとして加わった。彼らと一緒にプレーしていれば、自ずとそれを上回ろうと考えて、いろいろなテクニックを盗むわけです。彼らはそうやって進化していくんですね」

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