2022.07.15

エムバペがパリ・サンジェルマンで怪物に進化したポイントを風間八宏が発見。「足裏が見えない走り」とは?

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Getty Images

風間八宏のサッカー深堀りSTYLE

第8回:キリアン・エムバペ(パリ・サンジェルマン/フランス)

独自の技術論で、サッカー界に大きな影響を与えている風間八宏氏が、国内外のトップクラスの選手のテクニック、戦術を深く解説。第8回は、23歳にして現在、世界最高峰のプレーヤー、 パリ・サンジェルマンの日本ツアーでのプレーも楽しみな キリアン・エムバペを取り上げる。スピードスターから、ドリブルもシュートもスーパーな怪物に進化 しているが、その異次元の能力 を分析してもらった。

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体からボールが離れず、速い

 4年前に19歳でW杯優勝を経験すると、大会後のシーズンからは4年連続でリーグ・アン得点王。

 いまやフランス代表とパリ・サンジェルマンの絶対的存在として、また、世界で最も市場価値の高いプレーヤーとして、ワールドサッカーシーンの先頭を走り続ける数十年にひとりの逸材が、キリアン・エムバペだ。

 とりわけこの4年間の進化のレベルは異次元で、しかも23歳になった現在もプレーヤーとしての成長は止まらない。

パリSGでもフランス代表でも絶対的な存在に成長しているエムバペパリSGでもフランス代表でも絶対的な存在に成長しているエムバペ この記事に関連する写真を見る  果たして、エムバペの凄味はどこにあるのか。その傑出した才能は誰もが知るところだが、独自の視点を持つ風間八宏氏の眼にはどのように映るのだろうか。

「ひと言で言えば、怪物ですね。もちろん、とてつもなく足が速いことは誰もが知っているところですが、エムバペはスペースがない状況でも、ものすごく速い。だから、相手はエムバペが何をするかをわかっていても、簡単には止められません。要するに、わかっていても止められない選手。だから、怪物と表現させてもらいました。

 それと、最近のエムバペは、あの高速ドリブルのなかでもボールが体から離れなくなっています。10代の頃は、もっとボールが体から 離れた状態でプレーしていたので、ボールがエムバペのものではない時間がありました。ところが、ここ数年の成長のなかで、ボールを持ったら常にエムバペの時間になっている。こうなると、相手は飛び込むこともできませんし、一瞬で置き去りにされるだけになってしまいます。

 しかも、ゴール前で相手を外す動きも覚えたうえ、狭いスペースでもすべてが正確で速い。あれほど足が速くても、相手と競争はしていません。そういう意味では、単純に速い選手ではなく、ボールの動かし方や相手の動きを見極める能力など、すべてが揃っているスーパープレーヤーだと思います。

 正直に言って、私自身もエムバペの進化には驚いています。ただ、ここ数年はネイマールと プレーし、昨季からはそこにリオネル・メッシがチームメイトとして加わった。彼らと一緒にプレーしていれば、自ずとそれを上回ろうと考えて、いろいろなテクニックを盗むわけです。彼らはそうやって進化していくんですね」