2022.03.12

【旗手怜央・新連載】「試合中なのに頭のなかが真っ白」。2得点と大活躍した観客6万人のダービーを語る

  • text by Harada Daisuke
  • photo by Getty Images

旗手怜央の欧州フットボール日記 第2回

Jリーグの川崎フロンターレから、スコットランドのセルティックに活躍の場を移した旗手怜央。初めての欧州サッカー、欧州生活で感じた、発見、刺激、体験を綴っていきます。第2回は、大活躍だったレンジャーズ戦について。

◆ ◆ ◆

観客6万人を初体験

"空気"とは目に見えるものではないけど、感じることはできるのかもしれない。そう思った2月2日のレンジャーズ戦だった。

ダービー戦でゴールした旗手怜央。スタジアムの盛り上がりに「頭のなかが真っ白になった」というダービー戦でゴールした旗手怜央。スタジアムの盛り上がりに「頭のなかが真っ白になった」という この記事に関連する写真を見る  同じグラスゴーに本拠地を構える、セルティックとレンジャーズ。オールドファーム――両者が激突する一戦がダービーであることは認識していたけど、名称まであるのを知ったのは試合後のことだった。

 あの日は、ホームのセルティックパークに到着したときから、会場の空気が違っていた。チームメートの表情も、いつもとはどこか違っていて緊張感が漂っている。何よりピッチに入れば6万人の観客の姿が目に飛び込んできた。

 2020年に川崎フロンターレでプロサッカー選手としてのキャリアをスタートさせた自分は、その直後からコロナ禍にあった。そのため満員のスタジアムをほとんど知らなければ、大歓声というものをほぼ経験していない。

 それだけに6万人のファン・サポーターが発する"圧"とでも表現したくなる空気に、ぞわっとして全身に鳥肌が立った。

 日本でも神奈川ダービーや多摩川クラシコと、ライバルチームとの試合は経験していたけど、発煙筒まで炊かれたスタンドやチームメートの表情を見て、内容よりも結果が重要な一戦になることは容易に想像できた。

 順位的にも重要な一戦で、2得点1アシストという記録を残せたことは、自分としてもできすぎな結果だったと思う。同時に、ゴール前やアシスト以外のプレーでは、もっとチームに貢献できたという思いも抱いただけに、試合後にはそこが次に向けた課題だと振り返った。

 開始5分にミドルシュートを決めたときには、喜びに行った先がスタジアムの角、特に熱狂的なファン・サポーターのいるところだった。歓声がぶわーっと巻き起こり、顔を見ればみんながみんな叫んでいた。

 試合中にもかかわらず頭のなかが真っ白になる。そんな経験もまた、初めてのことだった。ファン・サポーターの歓喜、チームメートの興奮を見て、この一戦が本当に特別な試合である実感がさらに湧いた。