レアル・マドリード栄光の歴史は「スター」に依存する戦い方。戦術が最先端である必要がない (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

【「人」に依存する戦術】

 レアルの戦術は「人」に依存している。もちろん選手と関係のない戦術はありえないのだが、具体的にクロース、モドリッチ、カゼミーロ、カリム・ベンゼマの4人がいるといないでは、全く別のチームになってしまいかねない。

 前人未到のチャンピオンズリーグ3連覇を支えたのは、MFのトリオだった。

 戦術の定型やプレー原則が曖昧なレアルだが、攻撃重視は一貫して変わらない。SBが高い位置へ進出して5トップ化する(3トップ+両SB)。この時に相手のカウンターアタックを阻止するカゼミーロの存在感は絶大だ。

 左右の攻撃で司令塔となるのがクロース、モドリッチ。サイドを攻めきるか、サイドを変えるかの判断を的確に行なう。非常によく似た2人が攻撃のメトロノームだ。クロースのほうが後方待機型で長いパスでサイドを変える能力が高い。モドリッチは前線のラインに入るなどより動的だ。

 ミドルシュートのうまさは甲乙つけがたい。世界最高クラスのインサイドハーフを左右に揃えたのは何よりも大きく、クロース&モドリッチがレアルの戦術である。人に依存どころか人が戦術になっている。

 左サイドはヴィニシウスの覚醒で、クリスティアーノ・ロナウドが抜けたあとの穴は一応埋められている。ロナウドと同等とは言えないながら、突破と得点の両面で不可欠の存在に成長した。一方、右サイドはマルコ・アセンシオ、ロドリゴ、復活の兆しを見せているエデン・アザールが競っている状態で、決定版は見出していない。

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