名将テレ・サンターナは美しさを尊ぶ。選手と観衆のためのサッカー (3ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

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 左右非対称どころか、まるでパッチワークである。サンパウロはここまで崩れていないが、やはり左右は非対称だった。

 サンパウロはバルセロナと対戦した92年が4-2-3-1、翌年のミランとの対戦では4-2-2-2。4バックと2ボランチは共通だが、前4人の組み方が違っていて、さらに非対称である。

 92年はセンターフォワード(CF)にパリーニャ、トップ下にライー、右にカフー、左がミューレル。右のカフーは攻守に大きく上下動するが、左のミューレルはトップに残る。93年はパリーニャとミューレルの2トップだが、2人のポジションは前年とほとんど同じ。攻撃的MFは左のレオナルドがサイドから中央へかけて動き、右のジーニョは右ウイング兼任。さらに右SBになっていたカフーもあがってくる。

 選手の特徴に合わせた結果としての非対称なのだろうが、実はブラジルのフォーメーションそのものが、もともと非対称なのだ。

<美しい人柄が生む美しいサッカー>

 左右非対称型の元祖は58年スウェーデンW杯で初優勝したブラジル代表だ。4-2-4として有名になったこのチームが、左右非対称だった。左ウイングのマリオ・ザガロがMFとの兼任だったので、4-2.5-3.5とも呼ばれた。CFにババ、少し引いたところにペレ、右ウイングにガリンシャという前線の構成である。

 70年メキシコW杯優勝のブラジル代表は4-3-3と言われたが、実体は58年の4-2-4と同じ。ザガロの役割がロベルト・リベリーノ(MFの3に入っている)になっただけ。ガリンシャがジャイルジーニョになり、CFはババからトスタンに。ペレはそのままだった。

 どちらも今風に表記すれば4-2-3-1に近い。サンパウロはウイングがセレソンと逆の左だが、反対の右サイドは大きく動くワーキングウインガーを置く非対称だ。ボランチのひとりがプレーメーカー型というのも同じで、サンパウロではトニーニョ・セレーゾが務めていた。さらにCFのパリーニャは技巧派の「偽9番」なのだが、これは70年セレソンのトスタンと同じだ。

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