2020.04.03

バルサの伝統の継承者はオランダ人。
メトロノーム型プレーの真髄とは

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

 もちろんすべてがうまくいかないこともあるが、そんな時でも修正して流れに乗せる技術がある。デ・ヨングはキープ力がすばらしく、どちら側から相手に寄せられてきても巧みにボールを隠しながらターンして外してしまう。相手にプレスしたことを後悔させるだけのテクニックと足腰の強さを持っているのだ。いざという時には、驚くようなテクニックを発揮する。

 たまに凄いことをやるので、「もっとやれるだろう」という見方をされてしまうのだが、氷山が、海面上で見えている部分の何倍もが海中にあって見えないように、メトロノーム型の選手たちは滅多に緊急事態にならないので、普段はその全貌がわからない。彼らのポテンシャルは底知れないわけだが、決して技術をひけらかしたりせず、必要なことを必要な分だけ行なうのだ。そこに彼らの真髄がある。

 メトロノーム型の選手たちは、常にプレーを正常化してくれる。

 チームのプレーリズムが乱れて雑になりはじめても、ボールが彼らを経由するとスッと収まりがつく。速くなりすぎた時にペースダウンして落ち着かせ、遅れた時にはワンタッチのパスで加速させる。チームに彼らがいることで無駄も無理もなくなり、チームはポテンシャルを十全に発揮できるようになる。

 チームの「頭脳」によく喩えられるが、じつは本人はそれほど考えていないケースが多い。考えるというより、ごく自然にそういうプレーができるタイプなのだ。