2020.03.29

フィルミーノは「偽9番」以上の働き。
リバプールのエンジンはここが凄い

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

 偽9番の歴史は古く、1930年代に欧州最強で「ブンダー(驚きの)チーム」と呼ばれたオーストリア代表の、CFマティアス・シンデラーが偽9番だったようだ。40年代にはアルゼンチン史上最強と言われた「ラ・マキナ(機械)」のリーベル・プレートのアドルフォ・ペデルネーラが偽9番だった。彼の後輩であるアルフレード・ディ・ステファノがペデルネーラのポジションを奪い、のちにレアル・マドリードに渡って最も完成度の高い偽9番となる。ほぼ同時期にハンガリー代表で活躍したナンドール・ヒデクチも有名な偽9番だった。

 70年代には「ディ・ステファノの再来」と呼ばれたヨハン・クライフが偽9番の伝統を継ぎ、彼は監督になってからバルセロナでミカエル・ラウドルップにこの役割を任せている。その後はローマのフランチェスコ・トッティ、バルセロナのリオネル・メッシが偽9番として活躍してきた。

 歴代の偽9番に共通しているのは、本来の適性がインサイドフォワード(FW5人時代の外側から2人目のFW)だということ。

 現在の呼称ならインサイドハーフ。つまりFWとMFの中間的なポジションといえる。メッシの偽9番は、現代風に言うと右のハーフスペース(サイドと中央の間の中間エリア)から発進させることを目的としたもので、昔の言い方ならライトインナー(右のインサイドフォワード/8番)がスタートポジションになっている。