2019.09.05

勝者なきネイマールPSG残留の全内幕。
すべてのカギを握る人物とは?

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳translation by Tonegawa Akiko

 ヨーロッパの移籍市場が閉まるまでの数週間、私はバルセロナに滞在し、ネイマールの移籍の動向を探った。この街で私は、バルセロナのネイマールに対する複雑な思いを肌で感じた。バルセロナでは幹部も、選手も、メディアも、サポーターも、そしてサッカーにまるで興味のない者も、「ネイマールが戻って来るのではないか」というニュースに、顔を見合わせてこう言ったものだ。

「いったい、なんでいまさら?」
 
失意のうちにパリ・サンジェルマン残留が決まったネイマール photo by Reuters/AFLO 2017年の夏、バルセロナ市街はチームの顔ともいえる5人の選手の看板で埋め尽くされていた。空港にも駅にもバスの車体にも、力強くポーズを取ったリオネル・メッシ、イヴァン・ラキティッチ、ジェラール・ピケ、アンドレス・イニエスタ、そしてネイマールの姿があった。新シーズンのユニホームの宣伝だ。

 しかし、写真が貼り出されて10日もしないうちに、バルセロナは手痛い仕打ちを受けた。ネイマールが突然、パリ・サンジェルマン(PSG)に移籍したのである。ユニフォームの宣伝だけでなく、年間シートの宣伝、スポンサー企業の多くも、彼らの写真を使用していた。それにかかった費用は1200万ユーロ(約14億4000万円)だ。

 それを取り外さなければバルセロナはいい笑いものだ。200万ユーロ(約2億4000万円)をかけて看板を撤去し、別の選手を入れた看板をつけなおすのにまた750万ユーロ(約9億円)かかった。大損害だった。いや、金だけの問題ではない。バルセロナの人々の誇りは大いに傷つけられた。バルセロナはまだその裏切りを忘れてはいない。

 ここ数週間、バルセロナとPSGはネイマール移籍交渉の最終段階に入っているよう見えた。しかし、バルセロナのジョゼップ・マリア・バルトメウ会長は、マーケットの閉まる数日前、すでに地元テレビでこう言っている。

「我々はサッカー界の笑いものには断じてならない」

 ネイマールの移籍の真相。それはヨーロッパから遠く離れたひとりの人物が握っていた。今回の移籍騒動に関わったチームはどこもヨーロッパ有数の金持ちチームだが、その彼らをも操る存在だ。