2019.09.05

華麗なる変身で開幕3連勝。新生
アトレティコ&シメオネの戦術とは

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by REUTERS/AFLO

 2019-20シーズンのリーガ・エスパニョーラ。バルセロナ、レアル・マドリードのビッグ2は、それぞれ1勝1分1敗、1勝2分と、鈍い出足を見せる。一方で首位に立ったのは、開幕3連勝のアトレティコ・マドリードだ。

「1試合1試合を戦うのが、我々アトレティコのフィロソフィー」

 第3節、エイバル戦で決勝点を決めたMFトーマス・パーテイは語っている。目の前の1試合に集中する。戦いの規範は今までと同じだ。しかし、戦いの様式は変わった。

「ポゼッションなど意味がない」

 指揮官であるディエゴ・シメオネは以前、そううそぶいていた。就任8年目。リーガ・エスパニョーラを制し、2度にわたってヨーロッパリーグで優勝できたのは、勝負に徹したおかげだろう。守備の堅牢さによって得た安定で、カウンターを繰り出し、セットプレーでとどめを刺す。やや退屈だが、効率的で闘争心に満ちた、受け身的戦術が代名詞だった。

 ところがエイバル戦は0-2とリードされながら、3-2と鮮やかに逆転。実に派手な試合だった。ボールプレーヤーたちが挑戦的なパスを入れ、能動的にボールを前に運び、攻撃の苛烈さは増していた。

 新生アトレティコ・マドリードの変化とは――。

新生アトレティコ・マドリードの象徴的存在、ジョアン・フェリックス ポルトガル代表FWジョアン・フェリックスがベンフィカから加入したことは、ひとつの端緒になっている。

 開幕のヘタフェ戦、J・フェリックスはいきなり違いを見せた。自陣右サイドでドリブルをスタートすると、立ちふさがる選手たちを3人も置き去りにし、敵ペナルティエリアにまで入っている。ゴールに向かう技術と決定力は申し分ない。エイバル戦では初得点を記録。エースだったフランス代表FWアントワーヌ・グリーズマンのバルセロナ移籍を惜しむ声は聞こえてこない。

 なによりJ・フェリックスはそのプレーセンスの高さで、チーム力を高めることができる。巧みなポストプレーを見せ、フリックパスで一瞬にして決定機を創造。スピードに長け、ディフェンスの裏を破れるし、スペースも作り出せる。また、細身だが、空中戦の競り合いも苦にしない。前線でFWと連係し、中盤からボールを引き出し、攻撃の幅を広げつつある。