トッテナムが台頭した理由。金も選手も「サッカーの首都」に集まる (3ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 サンチェスのこだわりは、フットボール選手だけでなく、労働者すべてに見られるものだ。ボストン・コンサルティング・グループとトータルジョブズ社が昨年、36万6000人を対象に行なった調査によると、ロンドンは国境を越えて働く人々にとって「いちばん住みたい街」だ。この都市の魅力を脅かすのは、イギリスがEU(欧州連合)を脱退する「ブレグジット」が現実のものになった場合くらいだろう。

 方程式はシンプルだ。いい選手が集まれば、テレビ局やスポンサーから金が集まる。そうすれば、今までよりチャンピオンズリーグにも頻繁に出場できる。これによって、さらに儲けが期待できる。監査法人のデロイトが毎年発表しているリッチなクラブのランキング「フットボール・マネー・リーグ」の最新版では、チェルシー、アーセナル、トッテナムのロンドン勢がベスト10に入っている。

 ロンドンのクラブは、リバプールやバイエルン、あるいはスペインの2大クラブであるレアル・マドリードとバルセロナのように、以前から大きかったクラブを追う形で、エリートの仲間入りをするようになった。ロンドンのクラブは2005年まで、チャンピオンズリーグの決勝に進んだことがなかった。2006年以降、アーセナルが1度決勝を戦い、チェルシーは2度戦った(1度は優勝した)。そして今年、トッテナムが決勝を戦う3つめのロンドンのクラブとなる。

 今シーズンのプレミアリーグでロンドンのクラブが挙げた得点は、総得点の36.5%に当たる。イングランド1部リーグでは1986-87シーズン、1989-90シーズンに続き、史上3番目に高い割合だ。

 これまでイングランドでは、地方が首都に勝てる場はフットボールだけと言ってよかった。残念ながら、そんな舞台が消え去ることになるかもしれない。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る