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「バルサの化身」。現役を引退する
シャビが目指す監督像とは? (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Koji Watanabe/Getty Images

 その挑戦的な姿勢こそ、シャビの極意であり、バルサイズムそのものだった。

「自分たちがボールを持っていれば、決して敗れることはない」

 1988年にバルサの監督に就任したヨハン・クライフは、チームに前衛的な哲学を植え付けた。下部組織であるラ・マシアを、ボールプレーを軸に整備。その薫陶を一身に受け、育ったのが、シャビだった。

「バルサにはバルサのスタイルがある。勝つことよりも、いかにしてボールを失わず、運び、支配できるか。それはクライフが確立した概念であって、誰にも変えることはできない。たとえ、どんな監督が来たとしても、それは変わらないよ。カンプ・ノウに来る観客が、伝統に背くことを許さないからね」

 シャビは高らかに言う。その伝統を貫くことによって、彼は数々の偉業を成し遂げ、世界中から賞賛を浴びた。

<ボールゲームの追求こそが、勝利の法則>

 シャビはそれを頑なに信じている。勝ちにこだわるのか、美しいプレーを目指すのか、しばしば論争はあるが、彼の場合、迷いがない。

「私はイニシアチブを取って、攻撃を仕掛けるチームを見るのが好きなんだよ。かつてサッカー少年たちがみんなそれを目指し、愛したように、ね。自分たちがボールを持って、動かすサッカー。それには、スキルとビジョンを高めることが重要だ」

 そう語るシャビの理想は不動である。自ら選手として培ったプレーを、監督としても置き換えるのだろう。それは決して簡単なことではないが、厳しい挑戦にこそ、彼の心は沸き立つ。

 かつて、忘れられない試合について訊ねたことがあった。

「忘れられない試合は、2004年のクラシコ(レアル・マドリードとの伝統の一戦)だね」

 彼は間髪入れずに答えている。

「敵地でのゲーム。終了間際の得点で僕らが勝ったんだけど、ゴールが入った瞬間は忘れられない。束の間だったはずだけど、スタジアムが静まり返って沈黙した。それまでの騒ぎが嘘のように、人々が一瞬にして世界から消えた気がしたよ。選手同士、抱き合って喜んでいたら、野次やブーイングの嵐が戻ったんだけどね。世界の時が止まったようで、とても素敵だった」

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