長谷部誠に聞く仕事の流儀。
「日本の過労の問題はしっかり考えないと」

  • 鈴木達朗●取材・文 text by Suzuki Tatsuro
  • photo by Getty Images

――日本では"働きすぎ"が問題視されることも多いですね。

「働きすぎ、過労の問題については、しっかり考えないといけないですね。日本人の勤勉さは、戦後の日本が大きく発展し、現在のような先進国になれたことに間違いなく貢献していると思います。先人の方々がハードワークしてくれたおかげで今の僕らがあるわけですから、そこはリスペクトしないといけない。その部分を引き継ぎながら、これからの時代に合わせてどう変化していくべきなのか。そういう視点で議論することも大事だと思います」

――仕事の"効率性"も大きく関わる問題だと思いますが、ブンデスリーガでいうと長谷部選手がヴォルフスブルクに所属していた時に指揮を執っていた、フェリックス・マガト元監督が思い浮かびます。厳しい「軍隊式トレーニング」を課したマガト元監督をはじめ、さまざまな指揮官のもとでプレーしてきた長谷部選手も、トレーニングの内容が変化していると感じますか?

「間違いなく変わっています。マガトさんのやり方は、あの当時でも『かなり古い』と言われていました。それでも僕らは(2008-09シーズンの)ブンデスリーガを制していますし、結果を出せば評価される時代だったと思うんですよね。ただ、僕もドイツに10年以上いますけど、今では『あのやり方は、どのチームにも受け入れられることはないだろうな』という感覚はあります。

 今は体のことも、血液検査や、いろんなテクノロジーが進化しているので、そういうものを活用してコントロールできる部分が多くなってきている。一方で、精神的な"心"の部分については、そういった数値では測れないところもあります。それは、直接関係しているかはわからないですけど、日本の"ゆとり教育"が議論になっていたことにもつながっているんじゃないかな、と思うんです」

――具体的にどういったところでしょうか。

「自分を"磨く"ためには、どの分野においてもある程度の"厳しさ"が必要かな、と僕は考えていて。サッカーの世界でも、最後まで戦う姿勢、あきらめない気持ちなどは、練習などの中にある厳しさを通じて培われるものだと思っています。"効率性"を重視しすぎてそれが損なわれてしまわないよう、バランスを取ることがすごく大事。今の時代に必要なのは、そのバランス感覚に優れた人間のような気がします」

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