ズウォレ中山雄太は、移籍して3カ月で着実にチームに溶け込んでいる

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by AFLO

 4月7日のフォルトゥナ・シッタート戦でズウォレのサポーターが浮かれていたのは、春の日差しのせいだけではなかった。

 64分までに5-0とリードしたうえに、相手は退場者を出しており、勝利は間違いなし。残り5試合で、降格圏との差は勝ち点9まで広がりそうだ。数字の上ではまだ確実とは言えないが、降格する心配はもうない。

ゴール前のサポーターに向かってチャントの音頭を取る中山雄太ゴール前のサポーターに向かってチャントの音頭を取る中山雄太 快勝ムードと残留(ほぼ)決定を祝うムードのなか、ズウォレのヤープ・スタム監督は交代カードをどんどん切っていく。今年1月にズウォレに完全移籍した中山雄太も、MFクリント・レーマンスとともに68分からピッチに飛び出していった。

 背番号4をつけたエキゾチックなCBがボールにタッチし、さらにはパスを出すたびに、ゴール裏のサポーターは大歓声をあげた。そして、「ユータ・ナカヤマ、オッオッオッオー!」という個人チャントが3度、歌われた。

 中山がピッチに入った時、試合の雰囲気はすでに緩くなっており、ファンの楽観ムードがスタジアムに充満していたこともあったのだろう。68分から82分までの14分間で、中山は16本ものパスを通し、3度ボールを奪った。このひとつひとつのプレーにファンが騒ぐという不思議な雰囲気は、「ズウォレを応援しているなら立ち上がれ」という定番チャントでスタジアムが包まれるまで、ずっと続いた。

 22分間もの出場時間を得れば、何かしらの評価が出そうなものだが、全国紙『アルヘメーン・ダッハブラット』も専門誌『フットボール・インターナショナル』も、中山に対する採点をつけなかった。それでも、中山のプレーに沸くファンを見て記者たちは、「今日のマン・オブ・ザ・マッチは雄太だな」という声を冗談交じりに飛ばしていた。

 試合が終わり、選手たちは応援に対する感謝の意を表わすために場内を一周し、ゴール裏のサポーターと一緒に歌い踊った。そんななか、チームメイトに推されてチャントの音頭を取ったのが中山だった。なんとも言えない一体感が、中山とサポーター、チームメイトの間に生まれていた。

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