武藤嘉紀が3連続ベンチ外でピンチ。3つの理由でポジションがない (2ページ目)

  • 田嶋コウスケ●取材・文 text by Tajima Kosuke
  • photo by Getty Images

 この戦術のなかで、ポイントになるのがロンドンなのだ。ベネズエラ代表FWは強い身体を使ってクロスやロングボールを上手に収め、シュートやポストプレーでチャンスを生み出すことができる。最終ラインから闇雲にボールを放り込まれても、フィジカルを利して好機に変えてしまうのだから、これほど頼りになる存在もいない。

 一方の武藤は、プレースタイルが違う。当たりの激しいプレミアリーグで、日本代表FWを「1トップのCF」として起用する考えは、そもそも指揮官の頭の中にないのかもしれない。それゆえ、現在の1トップシステムではポジションがなく、「ベンチ外」が続いているのだ。

 もうひとつの理由は、ベニテス監督が3-4-2-1の「2」の位置、つまり攻撃的MFのポジションでも、武藤の起用に積極的でないことだ。序列でいえば、新戦力のミゲル・アルミロン→アジョセ・ペレス→クリスティアン・アツに次ぐ、4番手以下の扱いだろう。あるいは、武藤が「2」のポジションに向いていないと思っているフシもある。

 このポジションでは、周囲とパスをつなぎながら連係する動きが強く求められる。ボールを保持して前線にスルーパスを供給したり、機を見てゴール前に飛び出したりする場面も多い。さらに、相手ボール時には自陣深くまで敵を追いかける必要もある。つまり、攻守のバランス感覚が重要になるのだ。そのせいか、ベニテス監督は攻撃色の強い武藤を同位置で起用したことがない。

 最後の理由は、今冬の移籍市場で加入したアルミロンの存在だ。監督とサポーターの期待の大きさは、クラブ史上最高額となる2000万ポンド(約29億4000万円)の移籍金でも明らかである。そんな周囲の期待に応えようと、パラグアイ代表MFも加入直後から大きなインパクトを放っている。

 とくに目を奪われるのが、攻撃時にガツガツと仕掛ける積極的な姿勢だ。スペースがあればパスを要求しながら突っ走り、スルーパスを引き出そうとチャレンジする。ボールテクニックと俊敏性、スピードにも優れ、ボールを受ければ危険なプレーでチャンスを生み出している。

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