ベティスのレジェンドが乾貴士に贈る「ベティコを味方につける法」

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 元ブラジル代表、デニウソン。天才ドリブラーと呼ばれていた彼は1998年、6つのビッグチームからオファーを受けていたにもかかわらず、移籍先にベティスを選んだ。移籍金は当時の最高額(3200万ユーロ/当時のレートで約50億円)だった。

 彼の所属した7シーズンは、ベティスにとって、コパ・デル・レイ優勝などその歴史のなかでももっとも輝いていた時期と重なる。そのため、デニウソンはいまだベティスにとって特別な存在だ。ロナウド(ブラジル)が、いまだレアル・マドリードと強い絆で結ばれ、レアルが獲得する選手をロナウドがチェックするのと同じように、ベティスに来る選手はデニウソンが吟味する。

 そんなベティスのレジェンドが、新加入の乾貴士について語ってくれた。

プレシーズンマッチ、ボーンマス戦に出場した乾貴士  photo by Charlie Crowhurst/Getty Imagesプレシーズンマッチ、ボーンマス戦に出場した乾貴士 photo by Charlie Crowhurst/Getty Images「日本人の乾を獲得したいと思うのだが、どうだろうか?」

 昨シーズンの半ば、ベティスの幹部からこんな相談を受けたとき、私は最初、難しいのではないかと考えた。彼がプレーするエイバルはスペイン最北の山合にある小さな町だ。セビージャは開放的な南の街で、サポーターもとても熱い。同じスペインとはいえ、まるで違う国のようだ。エイバルで活躍できたからといって、ベティスでも成功するとは限らないと思ったのだ。

 そこで私は、乾のことを調べ始めた。

 乾のことは、彼がまだドイツのボーフムでプレーしているときから知っていた。もちろん知っているといっても、運動量が豊富でスピードがあって、創造性のある選手ということぐらいだ。

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