W杯決勝後、ポグバは亡き父の
写真にトロフィーを「触らせた」 (2ページ目)
決勝の後にフランスのディディエ・デシャン監督が行なった記者会見を見ただろうか。記者のひとりが最初の質問をしようとしたところ、10人ほどのフランス代表選手が会見場に乱入してきた。彼らは「ディディエ・デシャン! ディディエ・デシャン!」と叫び、水やスポーツドリンクやシャンパンを記者たちにかけ続けた。
選手たちは踊り、歌い、いったん部屋を出たものの、再び戻ってきた。最後に会見場を去る前に、乱入の首謀者であるマンチェスター・ユナイテッドのMFポール・ポグバは、こう叫んだ。
「フランス万歳! 共和国万歳!」
あからさまな愛国心を示すPR戦略を、フランス代表がそれなりに準備していたことは確かだろう。決勝が終わった後、選手たちは文字どおり三色旗にくるまっていた。
こうした演出は、2010年の南アフリカ大会で、選手たちがトレーニングをボイコットしてチームバスから降りなかった「恥辱のバス」事件をまだ許していないファンに向けられたものだ。白人が大半を占める国民は、非白人が大半を占める代表チームをまだ信頼しきっていない。
それでも、選手たちの愛国心は本物だ。彼らはフランスで生まれ育っている。多くのアイデンティティーを持つ彼らだが、核となるのは「フランス人」であることだ。
ポグバは亡き父の写真入りのすね当てを使用していた photo by JMPA ポグバは決勝の後、母と双子の2人の兄(どちらもギニア代表選手だ)と一緒に勝利を祝い、亡き父の写真にワールドカップのトロフィーを「触らせた」。
ポグバのアイデンティティーは数えあげればキリがない。息子、弟、黒人、イスラム教徒、ギニア系、世界チャンピオン、パリっ子、ロワシー・アン・ブリーのバンリュー生まれ、アフリカ系、そして多言語をこなすヨーロッパ人(彼は英語とイタリア語ができ、ワールドカップではペルー人記者の質問にすばらしいスペイン語で答えて周囲を驚かせた)。
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