苦しい時には必ずモドリッチがいる。旧ユーゴ内戦を乗り越えた男の本性 (3ページ目)
それが冒頭に記したように、相手のどこが弱く、味方のどこが強いか、瞬時に見抜く異能と結びついている。薄っぺらなうまさではない。猛禽類的な苛烈さとでもいうのだろうか。優しそうな顔をしているが、芯は強い。
「どこと戦うにせよ、尊敬の念を失うべきではないと思う。(試合前に)イングランドのメディアは、自分たちをこき下ろし、あることないことを書き立てていた。自分たちが偉大なチームであることを証明する必要があった」
準決勝後、モドリッチはそう洩らしている。延長戦に入る前、モドリッチは接触プレーや疲労で、ほぼ走れない状況になっていた。戦う気持ちだけで、勝負を決めるまでは立ち続け、延長後半に1点をリードすると、チームメイトに後を託すようにピッチを去った。
「我々は終盤が近づくにつれて、体が動くようになった。疲れているはずだったが、それを見せていない。誇り高い試合をした」
モドリッチはそう言って、仲間たちの健闘をたたえている。しかし、その戦いを先導したのはキャプテンだった。
「敗因? 我々にはモドリッチがいなかった」
そう語ったのは、決勝トーナメント1回戦で対戦したデンマークの選手だったか。苦しいとき、そこにはモドリッチが必ずいた。それがクロアチアの強さだ。
クロアチアは決勝トーナメントに入ってから、3試合連続で延長戦を戦っている。もはや満身創痍に近い。新しいエース候補だったFWニコラ・カリニッチはナイジェリア戦で交代出場を拒み、代表から外れている。決勝のフランス戦は、日程的にもかなり不利(1日休養が少ない)な条件に置かれている。
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