迷走する日本が、同じ島国アイスランドの
サッカー強化に学ぶべきこと (2ページ目)
W杯ではグループDに入ったアイスランド 一方、同代表を描いたドキュメンタリー映画『Inside a Volcano』は今年、ニューヨークで開かれたフットボール映画祭『kicking + screening』で最優秀賞の"金の笛"を受賞。同国史上初のメジャートーナメント、EURO2016本大会出場を決めるまでの彼らに密着した作品だ(機会があれば、フットボールファンにはぜひ観てほしい)。
その冒頭に描かれていたように、アイスランドは2013年11月のプレーオフでクロアチアに敗れ、初のW杯出場を目前で逃している。2017年9月に現役から退いた、同国のレジェンドであるエイドゥル・グジョンセンは敗戦後のインタビューで涙に暮れた。
しかし、アイスランドはもともと、W杯本大会出場など"夢のまた夢"と捉えられても仕方ないようなチームだった。前々回の南アフリカW杯が開催された2010年時点でのFIFAランキングは112位。現在でいえば、フェロー諸島、ジョージア、アゼルバイジャンなどと同等だ。予選で脇役の座を脱することはなかった。
ところが、1990年代後半から国を挙げて取り組んできた長期的なプロジェクトが、10年余りの助走期間を経て実を結び始める。その間、北大西洋上に浮かぶ小さな島国はフットボールのインフラを整備した。
「長い冬の間、雪はそれほどでもないが、冷たい強風が屋外でのスポーツを困難にしていた」とヘイミル・ハルグリムソン監督が明かすように、それまでは初夏から秋口までしかプレーできなかったが、人工芝の屋内ピッチを多く作ったことで問題は解決された。しかも、国内リーグ1部のブレイザブリクUBKのユースヘッドコーチを務めるハコン・スベリソンが「性別、レベル、経験に関係なく、誰でもここを利用できる」と語るように、どんな人でもこれらの施設でボールを蹴ることができる。
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