武藤嘉紀が振り返る今季の苦闘。「すべてうまくいく人生なんてない」 (3ページ目)

  • 山口裕平●文 text by Yamaguchi Yuhei photo by Getty Images

 しかし、苦しいときにこそ、その選手の本当の価値が問われるものだ。好調だったがケガでフォームを崩し、そのまま消えてしまった選手も少なくない。これまで順調に歩んできたが、武藤はどこかで壁にぶつかることは分かっていた。そこから這い上がる原動力になったのは「負けたくない」という気持ちだった。

「もちろんそれが一番ですね。どん底を知っているからこそ、這い上がったときにまた、いい景色が見えたり、いい喜びが味わえると思ったので、そこを目指してとにかくひたむきに頑張りました。もちろんケガをしないに越したことはないですけど、やっぱりどん底を知っているからこそ飛躍できると思っているので。すべてうまくいくサッカー人生なんてないと思うからこそ、このケガをプラスに変えていきたいと思っています」

"高く飛ぶためには、一度深くしゃがみこまなければならない"という至言があるが、武藤の気持ちはまさにそれだった。そのための行動も起こした。チーム練習に復帰後は、物足りないと思えばグラウンドに残ってボールを蹴り、結果が出なければチームメイトから「クレイジー」と言われるほどトレーニングをした。

 復帰してからしばらく結果が出なくても「成長できるチャンス。これも選手として絶対にいい経験になると思うので、踏ん張って誰よりも努力していきたい」と、ポジティブに捉えた。

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