日本代表「選外」の乾貴士が、エイバルの人々に贈るサッカーの喜び (2ページ目)

  • 山本孔一●文 text by Yamamoto Koichi photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

「得点がないことは心配していない。彼はこのエンブレムのために走り、汗を流している。得点を決めるのは乾の一番の仕事じゃない。チャンスを作ることだし、しかもすごいテクニックを見せてくれている。それで満足だよ。もちろん、得点をしてくれたらもっといいけどね」

 スタジアムからバス停へ向かう帰り道の途中で声をかけてきたサポーターも、日本人MFの献身的な働きとスペクタクルなプレーを高く評価していた。

 エイバルの記者もファンも本当に温かい。もちろん、それはチームがプリメーラ残留というシーズンの目標をほぼ達成しているところに由来する。もし、乾が残留を争っている近隣の街パンプローナのクラブでプレーをしていたら、今の蜜月関係は間違いなく作れてはいないはずだ。

 プロ選手として一番わかりやすい評価は数字に残る結果を出すこと。それは火を見るより明らかだが、乾とエイバルの関係を見ていると、サッカーというスポーツにおいては、個人の成績よりもチームとしてしっかりと機能し結果を残すことが大事であることを、あらためて感じさせてくれる。

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