日本代表「選外」の乾貴士が、エイバルの人々に贈るサッカーの喜び

  • 山本孔一●文 text by Yamamoto Koichi photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 リーガエスパニョーラ第28節。ヨーロッパリーグ出場権を争う直接のライバルであるエイバル対エスパニョールの一戦は1対1の引き分けに終わった。この試合に先発、後半36分までプレーした乾貴士は、ミックスゾーンに現れると、少し曇った表情を見せた。

エスパニョーラ戦に先発、後半36分までプレーした乾貴士エスパニョーラ戦に先発、後半36分までプレーした乾貴士「自分が決めていれば2対1で勝てていた。決めないとチームに迷惑をかけてしまうし、かけてしまった」

 エイバルの背番号8番が悔しがったのは58分のシーンだ。ペドロ・レオンの中央突破から、エリア内にこぼれたボールを押し込む決定的な場面で、左足インサイドで流した乾のシュートはゴールの右へと外れていった。

「毎試合、チャンスは本当に作っている。だが今シーズン、なかなかゴールが生まれないね」

 ミックスゾーンでは年配のスペイン人記者が、優しい表情を浮かべながらも乾が誰よりも答えを欲している直球の質問を投げつけていた。批判やネガティブな烙印を押すようなニュアンスではなく、まるで自分の息子に接しているかのようなファミリー感がそこにはあった。

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