リーガ3強時代は終わるのか。シメオネと共に熱を失ったアトレティコ (2ページ目)

  • 井川洋一●文 text by Igawa Yoichi
  • photo by Getty Images

 シメオネに異変が起きたのは、昨季のCL決勝が行なわれた7ヵ月前。1974年のチャンピオンズカップ(CLの前身)決勝で屈したバイエルンに勝利し、レアルとビッグイヤーをかけて激戦を繰り広げた。一昨季のCL準々決勝で敗れた雪辱を果たす舞台は整っていたが、その5ヵ月前にジネディーヌ・ジダンを監督に迎え、息を吹き返した「白い巨人」にまたしても苦杯をなめさせられた。

 黒づくめの服装と強面(こわもて)でタフなイメージのあるシメオネも、この敗北はこたえたようだ。敗戦直後の会見で、「自身の去就を考えなければならない」と話しており、実際に、9月にはクラブとの契約を2年間短縮して2018年6月までとした。異例の契約変更は、「鉄の男」と思われていた指揮官の中で何かが変わったことを示唆している。

 さらに12月初旬には、息子のジョヴァンニ(ジェノア)がスペインのメディアに「父はいずれ、(現役時代に所属した)インテル・ミラノの監督になるだろう」と発言。父ディエゴも4月にそう言っていたが、時期が時期だけに、愛息のこの言葉は様々な憶測を呼び、物議を醸した。

「フットボールチームは生き物だ」と言われることがある。血の通った人間たちが集団で戦うのだから当然といえばそうだが、リーダーの心境の変化はチーム全体に大きな影響を及ぼす。特にシメオネのように、選手たちに極限のハードワークを強いるタイプの指揮官ならば、自身がチームに完全にコミットしないかぎり、選手たちはついてこないだろう。

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