10連勝から大失速のマンC。名将グアルディオラの誤算はどこにあるか (3ページ目)

  • 井川洋一●文 text by Igawa Yoichi
  • photo by Getty Images

 おそらく、その見立ては正しい。ミドルスブラ戦のスタッツを見ると、ポゼッションは71%対29%、シュート数は25本対5本、枠内シュートは7本対3本と、完全に相手を圧倒していたことがわかる。前半にダビド・シルバ、後半にセルヒオ・アグエロが絶好機を仕留めていれば、結果は違っていたはずだ。ただ、敵将アイトール・カランカの発言は示唆に富む。

「前半、うちの選手たちは相手に敬意を払い過ぎていた。だからハーフタイムに、選手たちに『フットボールをプレーしてきなさい』と伝えたんだ」

 シティの10連勝を止めたセルティックも、初黒星をつけたスパーズもそうだったが、シティとペップの威光に臆さずに堂々と戦いを挑めば、勝機は見えてくる。この2チームは、相手のお株を奪うように高い位置からプレスをかけ、まだ完成を見ていないペップのチームを慌てさせた。

 また、バルサ育ちの指揮官は最後尾からショートパスをつなぐことにこだわるが、ジョー・ハートを放り出してまで迎え入れたGKクラウディオ・ブラボや、若きCBジョン・ストーンズは致命的なミスを犯してきた。

 引いた相手を攻略するためにバイエルン時代に編み出した、攻撃時にSBがセントラルMFのポジションを取る戦術も、どこかぎこちない。そもそも、フィリップ・ラームやダビド・アラバほど高い知性を備えたSBが今のシティには存在しない。足元の技術ばかりを重視して、本来はSBのアレクサンダル・コラロブやガエル・クリシに中央の守備を任せるのは、いかにも危なっかしい。事実、リーグ戦でのクリーンシートはまだ2試合しかない。

「フォールス9」と呼ばれる仮想ストライカーとして、ケビン・デ・ブライネを前線に配し、れっきとした点取り屋のセルヒオ・アグエロを外した時は、多くの人々が首を傾げた。中盤を厚くして試合を支配しようとしても、肝心の得点が入らなければ、絵に描いた餅と言われても仕方あるまい。

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