アルゼンチン優勝のカギは「砂漠の中の水」次第 (2ページ目)
もちろん、故障中のアグエロが復帰した場合は、また変更される可能性もないわけではない。だが、少なくとも、「走らない&守らない王様」メッシを最大限に生かす、あるいは周りがカバーするためには、基本を「4−4−1」+「メッシ」と考えて戦う方法が最もバランスを保てると考えたようだ。仮にこの状態でメッシがギアを上げれば、守備バランスを保ちながら攻撃力が倍増する。
前半33分にディ・マリアが負傷退場するまで、メッシとアルゼンチンはまさにそんな状態にあった。
実際、この試合で唯一生まれた前半8分のゴールは、メッシから生まれた。ピッチ中央付近でパスを受けたメッシがドリブルを開始し、ボールキープしながらベルギー守備陣を引きつけた後、右サイドのディ・マリアにパス。受けたディ・マリアがオーバーラップした右サイドバックのパブロ・サバレタに縦パスを出すと、ボールはベルギー左SBヤン・フェルトンゲンの足に当たってコースが変わる。すると、それをFWゴンサロ・イグアインが振り向きざまにダイレクトでボレーシュートを左サイドネットに突き刺したのだった。
もちろん、イグアインのボレーシュートがスーパーだったからこそ決まったゴールではあった。しかし、あの場面でドリブルを開始したのがメッシでなければ、右サイドのディ・マリアの周りにスペースは生まれなかったと思われる。
試合後、アルゼンチン人記者から今日のメッシのプレイぶりについて聞かれたサベーラ監督は、「メッシは今日、素晴らしい試合をしてくれたと思う。ゴールこそなかったが、ボールをキープし、3人の相手を引きつけた。彼が動けば我々に期待を抱かせてくれたし、相手を危険に陥れていた」と称賛したうえで、こんな表現でチームにおけるメッシの重要性を改めて説いた。
「ほとんどボールを失わないメッシのような選手は、砂漠の中にある水のようなものだ。彼は、砂漠の中で我々に水を与えてくれる存在なのだ」
確かに、13時キックオフの酷暑の中での試合では、メッシはチームにとって水のような存在だったのかもしれない。メッシがボールを持てば相手が慌て、その分、周りのチームメイトは楽になる。サベーラ監督も、うまい表現を思いついたものだ。
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