オチョア、ブラーボ、ハワード...。W杯を盛り上げる名GKたち

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Getty Images

小宮良之のブラジル蹴球紀行(12)

 ブラジルを旅して3週間が経とうとしているが、ブラジル人の仕事の遅さ、習熟の欠如にはようやく慣れてきた。まず、悪気がない。基本的に笑顔である。こちらが余裕を持って行動すればいいのだ、という結論に至る。というか、それしか選択肢はない。郷に入っては郷に従え。すべては心の持ちようである。

 どんな状況にも対応できるような心を持っていなければならないのが、ゴールキーパーだろう。彼らは来るものを拒めない、というのが仕事。受け身で対応する。それは簡単ではない。

ベルギーに惜しくも敗れたアメリカのGKハワードベルギーに惜しくも敗れたアメリカのGKハワード「ゴールキーパーはどこか狂っていなければ、やっていけないよ」

 それはスペインや南米で取材していると、必ず誰かが口にする言葉だ。「このポジションは特別なのさ」と。たったひとりだけ手が使える代わりに与えられた責任は重大。ひとつのプレイがチームを奈落の底に沈める。ゴールキーパーの後ろには誰もいないからだ。また、ひとりしか立てないポジションだけに、失敗は自分自身をも追い込むことになる。

「それでも守りきってシュートをストップしたときの快感はたまらない」

 かつてスペイン代表のゴールマウスを守ったサンティアゴ・カニサレスは語っていたものだ。

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