2014.02.26

アンチェロッティが語る「レアルで自分がやるべきこと」

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】素顔のカルロ・アンチェロッティ(3)

 ほどなくカルロ・アンチェロッティはマドリードへ旅立った。トップクラスのフットボールという狭い世界で、レアルのフロレンティーノ・ペレス会長はアンチェロッティにこう言いつづけていた。「カルロ、きみはいつか、うちの監督になる」

 2006年、アンチェロッティはレアルと契約までしたが、ACミランが彼を手放さなかった。昨年夏に来るべき時が来た。レアルはモウリーニョを追い出したがっていた。彼はレアルを3シーズン率いたが、お得意の守備的なフットボールをチームに押しつけ、プライドの高い選手たちを腐らせていた。

アンチェロッティ(左)と彼が信頼を寄せるシャビ・アロンソ(photo by Getty Images) サン・シーロの廊下で彼と交わした約束があるから、アンチェロッティがモウリーニョを批判することはない。だがレアルで自分がやるべきことについては、しっかり発言する。「目指すのは、他のクラブとは違うフットボールをすることだ」と、アンチェロッティは言った。「なぜならクラブのカルチャーが求めるのは……」と話してから、彼は頬をたたき、適切な言葉を探す。「……見ていてわくわくするようなフットボールだから。ここのサポーターは厳しい。カウンターアタックなんか誰も見てくれない。彼らが求めるのはゲームを支配するチーム、ポゼッションの高いチームだ。私たちはクラブの歴史と伝統を受け継いでいきたい」

 アンチェロッティがビッグクラブに人気があるのは、自尊心の強い人材が支配する監督という仕事をしながら、彼だけは周りに合わせることをいとわないからだ。初めての国に行けば、ささいな違いを見つけようとする。「イングランドでは一般的に言って、チームにディフェンスの戦術的なスキルがあまりない」と、彼は言う。「フランスのチームはフィジカルが強い。アフリカの選手が多いから。スペインのチームにはプレイする喜びがある。こういう違いを考えて仕事をしないといけない」