【CL】レアル、バルサ敗退の真相。欧州勢力地図は変わったのか? (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSU FOTOGRAFIA

 極めつけはバルサ戦の後半3分。右サイドでボールを受けたバイエルンのロッベンが、ドリブルで切れ込み、左足で先制ゴールをたたき出したシーンになる。まさに技あり。巧さ比べでは負けないとの自負があるバルサの選手にとって、これは脱帽モノ。まさに引導を渡されたような屈辱的なゴールだった。

 バイエルンのチャンピオンズリーグ優勝は12年前。その準決勝でレアル・マドリードを倒したとき以来になるが、現在の状況をそのとき予想した人はいただろうか。ドイツ勢同士が、攻撃サッカー陣営をリードするスペインのお株を奪うようなサッカーで、チャンピオンズリーグ決勝を争う姿を予想した人は。もはやドイツの伝統的なサッカーをそこに見ることはできない。

 価値観が平気で国境を越えるところが、欧州サッカーの魅力の一つだと僕は思う。他国の良いところを積極的に取り入れようとする姿が、欧州諸国には確実にある。欧州勢は欧州大陸という決して広くないプレート上で、多くの国々がしのぎを削っている。その切磋琢磨しあう姿こそが、世界的に高いレベルを維持する秘訣だ。

 チャンピオンズリーグは、それを促進するイベントに他ならない。そこで生まれる人材交流により価値観は欧州を駆け巡るとは、前回の原稿(「バルサ、レアルのお株を奪ったドイツ勢躍進の必然」4月30日)でも述べた通りだ。

 言い換えれば、お国柄は失われる運命にある。スペインらしさ、ドイツらしさ、イタリアらしさ、イングランドらしさは失われる運命にある。それを悲しがる人も少なくないが、それに固執しているとその国のサッカーは発展していかない。

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