【イングランド】W杯予選で格下とドロー。「信頼」なきスリーライオンズ

  • 鈴木英寿●文 text by Suzuki Hidetoshi
  • photo by Getty Images

先制弾を決めるも首位に立つチャンスを逃し、がっくりとうな垂れるルーニー先制弾を決めるも首位に立つチャンスを逃し、がっくりとうな垂れるルーニー 3月下旬、イングランドはワールドカップ欧州予選2試合を、いずれもアウェーで戦った。3月22日のサンマリノ戦、そして3月26日のモンテネグロ戦である。FIFAランク最下位に沈む弱小国サンマリノとの対戦を8-0の大勝で終えたのは、何の参考材料にも、判断材料にもならない。実際、地元イギリスのメディアは大半の自国選手に採点『6』前後、つまり平均点を付けている。むしろ重要なのは、グループHで首位の座を明け渡しているモンテネグロとの対戦だった。

 結果から言えば、イングランドは1-1のドローで試合を終えた。

「これが本当にFIFAランク4位のチームだろうか?」。それが今回、スリーライオンズ(イングランド代表の愛称)に対する率直な感想だ。ロイ・ホジソン監督は、「モンテネグロ(H組1位/勝ち点14)とポーランド(同3位/勝ち点8)とは、このあとホームで戦える(イングランドは勝ち点12)。まだ運命は、我々の手中にある」と強気に語ったものの、モンテネグロ戦の内容は、要所で勝ちきれない「おなじみのイングランド」だった。

 この試合のスタメンは、以下の通りである。

 GKはすっかり守護神として定着したジョー・ハート。4バックは右からグレン・ジョンソン、クリス・スモーリング、ジョリオン・レスコット、アシュリー・コール。守備的MFにはスティーブン・ジェラードとマイケル・キャリックの30代ベテランデュオが並び、右ウイングにはジェイムズ・ミルナー、左ウイングにはダニー・ウェルベック。トップ下には成長著しいトム・クレバリー。そして1トップがウェイン・ルーニーという布陣である。

 地元高級紙『タイムズ』のフットボール班は、試合当日、このスタメン予想を見事的中させた。同紙フットボール担当チーフのオリバー・ケイ記者は、この試合のカギを、「ピッチ上で適切なバランスを保つこと」と指摘。そして「モルドバ(H組5位/勝ち点4)やサンマリノ(同6位/勝ち点0)との対戦でいくら頑張っても、意味がない。私たちが見たいのは、強豪相手に質の高いプレイを披露する姿である。欲しいのは『信頼』である」と述べた。

 モンテネグロには、ユベントスでプレイするFWミルコ・ブチニッチがいるものの、大半の選手はイングランドのプレミアリーグより格の落ちるリーグに所属している。そう、モンテネグロはグループHの首位に立つものの、決して欧州の『強豪』ではない。一方、イングランドのスタメンは、現在プレミア首位を快走するマンチェスター・ユナイテッドから5名(スモーリング、キャリック、ウェルベック、クレバリー、ルーニー)、昨季王者のマンチェスター・シティから3名(ハート、レスコット、ミルナー)が名を連ねている。世界屈指のエリートクラブの威信にかけて、この試合はアウェーであっても、勝たなければならなかったのだ。

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