2012.08.26

【イングランド】なぜリバプールの成績はここまで悲惨なのか

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki
  • photo by GettyImages

リバプールの新監督に就任したブレンダン・ロジャーズ【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】今季のプレミアを占う(前編)

「フットボールはデータに乗っ取られたね」。リバプールのウィンガー、スチュワート・ダウニングは、ユーロ2012の期間中にそう嘆いた。誰かがダウニングに嫌な数字を突きつけたのだ。昨シーズンの彼は、アシストがゼロ、ゴールもゼロ。この情けない数字はリバプールの悲惨なシーズン(エバートンより下の8位だった)と、フットボール・ディレクターのダミアン・コモリの辞任に結びついた移籍市場での失敗を象徴しているかに見えた。

 だが、ダウニングは黙っていなかった。「アシストがゼロ? 僕はいつだってチャンスをつくっている。ただ、チームがそのチャンスを決めきれない。運が悪いだけだよ」。フットボールのデータ解析システム「オプタ」によると、ダウニングの言い分は正しいように思える。昨シーズンのリーグ戦でダウニングは55回のシュートチャンスをつくったが、1度も得点に結びついていない。

 この数字を知っていれば、昨シーズンのリバプールを別の視点から見ることができるし、今後にもっと希望を持つこともできそうだ。事実、プレミアリーグ全チームのなかで、リバプールは今シーズンに最も巻き返しを期待できそうなクラブだ。リーグ制覇は無理だが、そこそこの逆襲は果たせるはずだ。

 クラブのリーグ順位を予測するのに最も役立つ数字は、選手年俸の総額だ。『サッカーノミクス』(邦訳『「ジャパン」はなぜ負けるのか──経済学が解明するサッカーの不条理』NHK出版)を僕と一緒に書いたスポーツ経済学者のステファン・シマンスキーが言うように、フットボールではたいていの場合、選手年俸が最高のクラブが優勝し、最低のクラブが最下位になる。それはフットボール選手が、なんの感傷も交えず、最も高い年俸をもらえるクラブへ行く人種だからだ(彼らの言葉で言えば、それが「プロフェッショナル」だ)。