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アルビレックス新潟、誇るべき準優勝――エンタメ性に富んだ熱戦を演じたサッカーの価値 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 事実、新潟の選手たちは後半、怒涛の反撃で2点差を追いついて見せた。呼び水となったのは、松橋監督の大胆な采配である。

 新潟は、65分に3人の選手交代を行なうと、72分にも2人を交代。名古屋がひとりの選手交代も行なわぬうちに、すべての交代カードを切って勝負に出た。

 攻めだるまと化した指揮官に「まったく違和感はなかった」と語るのは、ベンチから試合を見ていたチームキャプテンの堀米悠斗だ。

「僕たち選手は、リキさん(松橋監督)の采配に対して一点の曇りもなく、信じ続けてここまで来た。1点取れば雰囲気が変わる、絶対いけるっていうのは、ベンチのなかでもみんなが口にしていたことで、やっぱりそうなった」

 71分に、交代出場のダニーロ・ゴメスからのクロスを谷口海斗が頭で押し込み1点を返すと、土壇場の90+11分には、これまた交代出場の小見洋太がVARによって自ら得たPKを決め、同点に追いついた。

「自分も含めて、本当に誰がピッチに出ても新潟らしいサッカーが表現できる」

 そう言って胸を張ったのは、秋山である。

 とはいえ、惜しみなくパワーを使った新潟の選手たちには、延長に入ると疲れが色濃く見え始めた。延長前半に勝ち越しゴールを許したときには、もはや勝負はこれまでかと思われた。

 しかし、ドラマは終わらない。

 延長後半の111分、自陣ペナルティエリア手前で舞行龍ジェームズが奪ったボールを、その右脇を駆け上がってきた藤原奏哉が引き取り、前線で待つ長倉幹樹へ縦パスを打ち込む。すると、長倉は鮮やかなターンでマークを外し、前線へロングスルーパス。これを小見が左足ワンタッチで仕留めた。

 値千金の同点ゴールは、流れるような美しさをたたえた、実に新潟らしい得点だった。

「最後は気持ちの戦いになっていく部分はあったので、そこはしっかりと選手が最後までやってくれたと思うし、非常に誇らしい気持ちでいる」

 試合後の松橋監督の言葉である。

 新潟は再び同点に追いつくも、結局はPK戦で敗れ、クラブ初のタイトルを手にすることはできなかった。

「PKまでもっていかず、延長までに決着をつけたかった」とは堀米。チームキャプテンは、「あれだけ自分たちに流れが来ていたのなら、勝ち越して仕留めきるのが、今日のゲームの僕たちの勝ち筋だった」と悔やんだ。

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