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37歳・渡邉千真の今――J1から数えて「7部」にあたる舞台でのプレーを選択したわけ (3ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text&photo by Takamura Misa

 今年でプロ16年目。これまでも、ゴールを取ることで自身の価値を証明してきた。2009年に、横浜F・マリノスでプロキャリアの第一歩目を踏み出した時からだ。先発メンバーとして起用されたサンフレッチェ広島とのリーグ開幕戦、開始わずか3分で挙げたプロ初ゴールが「FWとしての原点」だと言う。

「今の時代もそうですが、高卒でプロになるのと、大卒でプロになるのとでは周りの期待値も全然違いましたからね。即戦力になれないと、すぐにプロキャリアが終わってしまうんだろうなという危機感もあった。

 しかも、F・マリノスの錚々たる顔ぶれのなかでルーキーなのに9番をつけさせてもらったとなれば、何がなんでも結果を残さなければ、という思いは強かったです。外国籍選手はもちろん 、すばらしい日本人選手も多かったなかで、今以上に数字へのこだわりも強かった気がするし、『それを残せるかどうかでキャリアが変わる』くらいに思っていました。

 そしたら、開始3分で点を取れて......正直、あれには自分でも驚いた(笑)。覚えているのは、点を取ったということと、2-4で負けたということくらいだけなんですけど。ただ、個人的にはあの1点があったから少し肩の力が抜けて、その後も点を重ねられたんだと思っています」

 事実、この年のJ1リーグで渡邉はチーム最多の13得点を挙げて存在感を示す。ルーキーとしてはJリーグ史上2人目のシーズンふた桁得点だ。新人の年間最多得点記録を更新したこの数字は、以降のJリーグの歴史においてもいまだ破られていない。

 さらに、2012年から在籍したFC東京では、2013年にキャリアハイとなるシーズン17得点をマーク。2015年から在籍したヴィッセル神戸では、2015年、2016年と初めて2年連続のふた桁得点を実現する。それらが積み重なって、2018年夏に加入したガンバ大阪においては、2020年のJ1第10節・サガン鳥栖戦で、Jリーグ史上15人目となる『J1通算100得点』を達成した。

 それらに代表されるメモリアルなシーズンに限らず、彼が戦ったJリーグでの15シーズンすべてで得点を決めてきたのも、彼のFWとしてのプライドを誇示するものだろう。戦うチームが変わっても、ステージが変わっても、それがシーズン途中の加入であろうと、渡邉は得点を重ねることで自身の価値を証明してきた。

(つづく)◆渡邉千真の気概「自分で限界を作りたくない」>>

渡邉千真(わたなべ・かずま)
1986年8月10日生まれ。長崎県出身。国見高から早大に進学。大学卒業後、2009年に横浜F・マリノス入り。新人ながら開幕スタメン出場を果たし、J初ゴールもマーク。同シーズンにはルーキーとしての最多得点記録(13点)も樹立した。2012年にFC東京に完全移籍。以降、ヴィッセル神戸、ガンバ大阪、横浜FC、松本山雅FCに在籍し、各クラブで得点源として活躍した。そして2024シーズン、SHIBUYA CITY FCに加入。東京都社会人リーグ1部でプレーしている。

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