37歳・渡邉千真の今――J1から数えて「7部」にあたる舞台でのプレーを選択したわけ (2ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text&photo by Takamura Misa

「Jクラブに在籍していた時は、基本的には天然芝でプレーしていましたからね。山雅では人工芝でやっていたこともあったけど、練習も試合も常に(人工芝で)、というのは早稲田大学時代以来、15~16年ぶりかな。しかも、クラブハウスもないし、日によって練習場も変わりますしね。

 正直、最初は『お~、なかなかキツいな~』とは思ったし、慣れるまでは大変でしたけど、やると決めた以上は、目の前にある環境がすべてだと受け入れたというか。Jクラブでプレーしていた時もそうだけど、環境って求めすぎるとキリがないし、結局、環境に適応できるかは、自分の考え方次第だから。変わらないことをあれこれ思うより、自分が考え方を変えてその環境を当たり前にすればいい。

 だから、ここが自分の戦う場所だと受け入れて、やるべきことをやるだけ。実際、加入して約2カ月がすぎたけど、慣れてしまえば人間って意外と何にでも適応できるんだなって思っています」

 渡邉の言う「やるべきこと」の最上位は当然、点を取ることにある。チーム最年長選手として、これまでの経験を伝えることやチームを引っ張ることを期待されているのは百も承知だが、それだけではプロサッカー選手として生き残れないからだ。それは、キャリアを積み上げるほど、強く感じてきたことだという。

「この世界は、結果を残さないと評価されないし、生き残れない。プロになった時から自覚していたことではあるけど、ベテランになるほど、そこはマストになっていくということは30歳をすぎた頃からより意識するようになりました。僕自身は38歳になろうとしている今も現役をさせてもらっていますけど、近年は特に、30歳代になった途端にプレーする場を失う選手が増えましたからね。

 正直、自分のキャリアを振り返ると、30歳くらいの頃が、一番心身ともに充実していたという実感があるだけに、世の中が考える現役のピーク年齢みたいなものがどんどん低くなっているのは厳しいなって思うところはあります。でも、異を唱えたところでどうにもならないから(笑)。

 結局、それに抗おうと思うならピッチで証明するしかない。実際、それができている選手は、30歳をすぎてもプロとして戦っていると考えても、現役に拘りたいならその力を自分につけていくしかないと思っています」

 その思いがあるからだろう。取材の3日前に行なわれた東京都社会人リーグ1部の第2節、Criacao Shinjuku Procriar戦で移籍後初ゴールを決められたことに安堵の表情を浮かべていた。

「3点のリードを奪った状況での出場でしたけど、どのカテゴリー、どのチームでも、シーズンが始まってできるだけ早くゴールを決められたほうが気持ち的にラクになるので、早い段階で1点目を取れたのはよかったです。与えられた時間のなかで求められた仕事をいかに結果で表現できるかによって、自分の価値も変わっていくはずだから」

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る