ベガルタ仙台13年目の3・11 「これで燃えなかったらサッカー選手じゃない」想いを胸にJ1昇格へ (4ページ目)

  • 戸塚 啓●取材・文 text by Totsuka Kei

【13年前を思い返すことで絆を深め合う日】

 仙台のジュニアユースで育った郷家も、「今日は何としても勝ちたかった」と振り返る。「ゼロゼロの状況で入ったので、勝ちを手繰り寄せようという思いでやりました」と話した。落ち着いた言葉に、チームを背負うとの芯が通っていた。

 ユースから昇格した入団2年目の工藤蒼生は、プロとして初めてユアスタのピッチに立った。「ホームで絶対に勝ちたい、ファン・サポーターと喜びを分かち合いたいという思いだったので、とてもうれしいです」と勝利を噛み締める。そして、2011年を踏まえて自らの立場に触れた。

「あの時は、スタンドで勇気とか元気を与えられた側でした。今回はしっかりと勝つことで、ファン・サポーターのみなさんや、震災にいろいろな思いがある人に、勇気とか元気を届けられたのかなと思います」

 13年前のあの日を思い返すことで、クラブと、チームと、ファン・サポーターが、絆を深め合う。森山監督のもとで一体感を高めているチームを、どんな時でも支えていく。クラブに関わる誰もが、そうした日々の行き先にJ1昇格があると願っている。

著者プロフィール

  • 戸塚 啓

    戸塚 啓 (とつか・けい)

    スポーツライター。 1968年生まれ、神奈川県出身。法政大学法学部卒。サッカー専誌記者を経てフリーに。サッカーワールドカップは1998年より7大会連続取材。サッカーJ2大宮アルディージャオフィシャルライター、ラグビーリーグワン東芝ブレイブルーパス東京契約ライター。近著に『JFAの挑戦-コロナと戦う日本サッカー』(小学館)

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