ジュビロ磐田・横内昭展監督が目指すサッカー 攻撃的なスタイルは、見ている者を魅了した名将ミシャを彷彿とさせる (2ページ目)
【ミシャを彷彿とさせるサッカー】
遠藤が言う攻撃で相手を押し込むというスタイルは、ある監督のサッカーを彷彿とさせる。横内監督は、ミシャことミハイロ・ペトロヴィッチ監督の影響を受けたと監督就任時に述べていたが、大宮戦での攻撃的なサッカーからは広島、浦和時代のミシャのサッカーを磐田に投影しているように見てとれた。
浦和でのミシャのサッカーは選手が流動的に動き、どこからでも点を奪える超攻撃的なスタイルで、プレーしている選手も見ているファンも楽しめるサッカーだった。当時の浦和とは個の能力での違いがあるので、浦和のように相手を圧倒するのは難しいが、限られた戦力でやろうとしていることができているのは、与えられたタスクを選手がしっかりこなしているからでもある。
たとえば、すばやいトランジションだ。
「トランジションは、ボランチだけじゃなく、監督からチーム全体に言われていて、しっかりやろうという意識でいます。このチームのテーマのひとつです」
遠藤はそう語るが、攻から守の切り替えが非常に早い。カタールW杯で日本代表は、自分たちがボールをロストしても、その直後、挟み込むように厳しいチェックで相手からボールを奪い、ショートカウンターを発動させていた。すばやいトランジションは、森保監督やミシャのチームの生命線でもあるので、両人ともに口酸っぱく選手に伝えていた。
横内監督も同じようにそれを選手に徹底している。大宮戦でもミスが生じてボールを失うこともあったが、すばやく切り替えてボールにアプローチし、奪い、次の攻撃につなげていった。
「ミスを恐れずにプレーしたうえで、相手のボールになることもあるけど、その時、できるだけ相手の低い位置、自分たちは高い位置でボールを回収できるような守備をみんな意識しています。そこで奪ってショートカウンターとかで点がとれればいいかなと。簡単なロストとかは極力なくしながら前からプレッシャーをかけて、相手のエリアでたくさんプレーすることもテーマのひとつです」
遠藤が言うテーマは前半、ほぼ完璧にできていた。
チームのスタイルは見えてきているが、最終的な完成形について、遠藤はこう語る。
「基本的には、ボールを保持し、試合を支配していくサッカーです。日本代表がW杯予選でやった戦い方というのを、監督は最低限と多分考えているのでしょうけど、そのレベルにまでもっていくのは大変でしょうね。でもチャレンジすることが必要だと思うので、今そこにみんなトライしています」
W杯予選時の日本代表のサッカーは、ボールポゼッションを大事にしつつも高い位置でボールを奪い、できるだけ早くゴールに迫るスタイルだった。これを実現するにはすばやいトランジションが不可欠だ。そのため、横内監督がテーマのひとつとして重視しているのには合点がいく。
大宮戦は決定力に課題が残り勝ちきれなかったが、横内監督は「そこが課題です。サッカーには、こういうことが起こりえるのですが、本当に強いチームなら踏ん張れる。そこを踏ん張りきれないところが現状の力です」と冷静にチームの現状を見極めていた。
遠藤は「勝ち点3をとらないといけない試合だったけど、安定して戦えていたし、チャンスを作れていたので、悲観する内容ではない」と、前向きにとらえていた。
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