なぜ強豪高校サッカー部に女子マネージャーはいなかったのか。近年は増加傾向、多岐に渡って奮闘中 (3ページ目)
マネージャーもサッカーを通して人として成長
だが、前例がない仕事を進めるのは簡単ではない。
「先輩がいないのでルールがないし、(部員がすべてをこなすので)仕事もほとんどない。最初はほんまに何をしていいかわからなかった。大丈夫かな? 本当に3年間続けられるのかな? と思いましたけど、必ず3年間続けると谷監督と約束したし、自分が決めたことだから、簡単には辞められないと思っていました」(平井さん)
「最初は何をしていいかわからなかった」という、神戸弘陵サッカー部女子マネージャーの平井さんこの記事に関連する写真を見る 与えられた記録係の仕事も、ルールを全く知らないまま入部したため、スタッフがつきっきりで教えなければいけない。昨年は「オフサイドって何ですか?」と口にする現場に筆者が出くわしたこともあった。奥手な性格もあり、部員との距離も縮まらず、自らが思い描いていたマネージャー生活とはほど遠かった。
だが、2年目を迎えた今年は成長の跡がうかがえる。
「せっかくマネージャーをやらせてもらっているのに、何もできないままじゃダメだなって思ったんです。試合で会う他チームのマネージャーはすごく仕事ができるので、こんな風にならないとダメだなとも思いました」(平井さん)
春からは後輩が加わり、先輩としての自覚が高まったのも大きい。ただ仕事を待っているのではなく、グラウンドを歩き回って自らの仕事を見つけ出そうとする姿勢も出てきた。弘陵きっかけでサッカーという競技自体が好きになり、オフがあれば勉強のためにJリーグや他チームの試合を観に行くようにもなったそうだ。
「もともと人見知りだったんですけど、サッカー部に入っていろんな方と関わることができた。コミュニケーション力がついたというか、自分から話に行けるようになりました」。そう話す平井さんは、将来はサッカーの仕事に関わりたいと考えている。
「サッカーは少年を大人にし、大人を紳士にするスポーツだ」。日本サッカー界の父と呼ばれるデッドマール・クラマー氏の言葉だが、プレーヤーだけに当てはまる言葉ではないのかもしれない。高校サッカーとの出会い、サッカー部のマネージャーの経験が人見知りだった少女を変えつつある。
彼女たちのようにサッカーを通じて成長する生徒は数多くいる。減少傾向にあるサッカーファミリー拡大の意味でも、これからマネージャーの存在はより重要になっていくはずだ。
◆【画像・写真】充実の食事、きれいな一人部屋・・・令和のサッカー部寮生活
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