Jリーグ優勝争いの行方。横浜F・マリノス、サンフレッチェ広島、川崎フロンターレの三つ巴や残留争いを福田正博が解説 (2ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by Fujita Masato

広島は横浜FMと川崎にプレッシャーをかけられるか

 今季から就任したミヒャエル・スキッベ監督は、ボールを保持しながら、縦にも速いサッカーをしながら、選手たちに自由と規律を与え、実に見事にチームを躍動させている。若い選手たちが多いが、彼らの自信にあふれたプレーを見ると、指導者の手腕ひとつでチームというのはこれほど変わるのかと感心してしまう。

 広島は、実は今季3冠制覇の可能性も残されている唯一のチームでもある。ルヴァンカップでも準決勝に勝ち残っていて、天皇杯準々決勝もセレッソ大阪に勝利して準決勝に進出した。

 森保一日本代表監督が率いていた2015年のリーグ制覇を最後に、タイトル獲得から遠ざかっているだけに、そこをクローズアップすると優勝への重圧が気になるかもしれない。だが、彼らにとっては横浜FMや川崎のほうが残り試合数も多く、「追い抜かれても仕方ない」と割りきれるだろうし、「タイトル獲得のチャンスが3回あって、どれかひとつ手にできればいい」くらいに気楽に臨めるのではないか。

 これは強みにもなる。目の前の一つ一つの戦いで勝ち点を積み重ねることに集中できれば、横浜FMや川崎に対して逆にプレッシャーをかけられるからだ。横浜FMと川崎に「勝ち点を手にできなければ広島を上回れない」という重圧がかかれば、広島の7年ぶりリーグタイトル奪還が見えてくるだろう。

 この3チームを追うのが、鹿島アントラーズと柏レイソルだ。しかし、鹿島はつい1カ月半ほど前までは、ACL出場権獲得圏内が固いと思っていたが、いまはそれも危うい。

 レネ・ヴァイラー監督が解任され、あとを引き継いだ岩政大樹監督はよくやっているし、外部からは伺いしれない問題があったのかもしれない。ただ、現状の成績と、それまでの戦いぶりを比較しても、タイトルを目指して好調に戦っていたシーズン中に、これがどうしても必要な軌道修正だったようには感じられないのだ。

 この状況に陥った要因は、やはり上田綺世が海外移籍した穴埋めをできなかったところにある。前半戦にリーグ最多のゴール数を誇ったストライカーが抜ければ、チーム力が落ちるのは目に見えていたからだ。

 それだけに残念なことだし、だからこそ終盤戦は来季につながるような意地を見せてもらいたいたいと思っている。

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