福田正博がパリ・サンジェルマンに感じた2つの「速さ」。日本サッカーとの大きな違いを指摘 (3ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by Fujita Masato

90分をとおした試合のつくり方

 一方、日本のサッカーも、試合の最初から最後までを同じように走る難しさを知っている。ただ、ペース配分はできないケースが多い。この背景には、日本人の生真面目な気質や、ふだん目にするJリーグでそうしたシーンが見られないというのがあると思う。加えて、子どもの頃からペースを落とすようなプレーは「ダメなこと」と教えられる指導も影響しているのではないだろうか。

 サッカーというのは、90分を終えた時点で相手よりも1点でも上回っていれば勝利できる。これが目的地で、ここにたどり着くためにプロセスは幾通りもある。それを誰もがわかっているにもかかわらず、日本サッカーでは試合序盤の入り方で圧力をかけることばかりが強調されたりする。

 もちろん、試合の入りで失点するより、得点したほうが、主導権を握って優位にゲームを進められる。しかし、サッカーは主導権を握るのが目的ではない。日本サッカーが次のレベルにステップアップするには、そろそろ90分をとおした試合のつくり方の部分にも目を向けるべきだろう。

 これは日本サッカー全体の課題でもある。過去のW杯でも試合開始から飛ばしに飛ばして優勢に立ったものの、70分あたりで息切れを起こして試合をひっくり返されたことは何度もあった。そのたびに選手交代枠の使い方や、メンバーの選択などが議論されたりもするが、それは根本的な改善にはつながっていない。

 最後まで走り抜ける体力をつけるか、それが無理なら賢い戦い方を身につけるか。理想は前者だろう。しかし、それは一朝一夕で手にできるものではないだけに、やはり後者が現実的な方策になる。

 日本サッカーはJリーグが誕生してから、世界のトップレベルとの差を少しずつ埋めてきた。たとえばパススピードの速さやパスレンジの長さなどは、以前に比べると随分と改善されてきた。

 そうしてレベルアップしてきたが、PSGの試合を見ながら、まだまだ世界基準に達してない部分があることも見えた。世界最先端に追いつくにはまだまだ課題は残っているが、日本サッカーにはもっと成長できる余地がたくさんあるということでもある。

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