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ヴィッセル神戸に何が起きているのか。覇気のなさが蔓延して再び最下位に (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 そんななかで、アンドレス・イニエスタだけは、相変わらず別次元にある。前半からトップ下でボールを受けると、すかさず武藤嘉紀にパスを入れ、リターンを受けた汰木康也がネットを揺らすも、これはハンドの判定。また、最終ラインの前を横切るようにドリブルし、山口蛍とのパス交換から左足で際どいシュートを打ち、汰木のパスを左サイドで受け、右アウトで流し込んだクロスも芸術的だった。後半、ゴール前に走り込んだ山口蛍に出したパスは神業的だった。

 そしてアディショナルタイム、イニエスタが蹴ったFKは右隅に決まり、劇的な同点弾と思われた。しかしVAR判定で覆ってしまう。ジャッジに関してはやや不運もあったが......。

 いずれにせよ、神戸は目覚めるのが遅すぎた。

 ロティーナは守備からチームを作るタイプの監督である。その点、今はプロセスにあるのだろう。ただ、守りに入るのと腰が引けるのは同義ではない。

「もっと早くボールを動かし、1対1の状況を作るべきだった」

 ロティーナ監督は試合後、淡々と語った。沈みかけたチームを引き上げるため、慌てふためいても仕方ない。残留に向け、やるべきことは整理されつつある。しかし冒頭で酒井が語ったように、少しでも切迫感を欠けば、泥沼から抜け出せなくなるだろう。

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