横浜F・マリノスを筆頭に浦和、神戸、川崎もチーム力アップ。Jリーグ再開で見えたACLの"収穫"

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

<コンディション的にはかなり厳しい>

 アジアチャンピオンズリーグ(ACL)に参加した4チーム、横浜F・マリノス、浦和レッズ、ヴィッセル神戸、川崎フロンターレ、すべてに通じる実状だろう。高温多湿の東南アジアで、中二日の6連戦(ヴィッセル神戸は4試合)。結果は川崎を除く3チームがノックアウトステージに勝ち上がった。

 ほぼ1カ月ぶりのJリーグで、疲れを引きずる選手は少なくなかった。柏レイソルに勝ち切れなかった浦和、ガンバ大阪に敗れた神戸は顕著だった。肉体的、精神的な消耗は激しかったはずだ。

 しかし、苦しい試合を乗り越えることで、チームとして貴重な収穫も手にしている。多くの選手は、厳しい勝負をものにすることで、初めて成長を遂げる。自身の技術やコンビネーションに確信が持てるようになるし、それによって自信も身について、プレーが安定する。イージーな相手や環境では、なかなか収穫を得られない。

 ACLグループリーグにおいてJリーグ勢で唯一、トップで通過した横浜F・マリノスは、その恩恵を最も得たチームと言えるだろう。

 横浜FMの指揮官であるケヴィン・マスカットは、ACLで"ターンオーバー"を採用し、積極的に選手を入れ替えている。GK高丘陽平を除いて、フィールドプレーヤーはひとりも固定していない。コンディションのいい選手から、ピッチに送り込んだ。

 5月7日、Jリーグ凱旋試合となった名古屋グランパス戦では、ベトナムで培った経験が随所に出た。

ACLを経てプレーに逞しさを増した感のある高丘陽平(横浜F・マリノス)ACLを経てプレーに逞しさを増した感のある高丘陽平(横浜F・マリノス)この記事に関連する写真を見る 率直に言って、試合内容は低調だった。コンディションが万全ではないのか、出足が悪く、判断も遅かった。どうにか押し込んでも、プレーに緩急を出すなどの工夫が見えず、ノッキングした。ブラジル人カルテットのパワーで押し切ろうという単調な攻撃ばかりで、ほとんど攻め崩すことができなかった。

 しかし、横浜FMは運も味方にした。相手のクリアが絶妙なゴール前のパスになって、同点弾が生まれる。さらに、名古屋の得点がVARのオフサイド判定で取り消された場面も、主審の「オフサイドです」ではなく「オフサイドにします」という言葉から読み取れるように、ツキがあったと言わざるを得ない。

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る