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下馬評を覆して躍進するサガン鳥栖。いまだJ2降格がない優秀な地方クラブの真髄

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 Jリーグ30年の歴史において、いまだ「J2降格」を経験したことのないクラブは、わずかに3つしかない。

 ともに"オリジナル10"にして、Jリーグ創設以来J1で戦い続ける、鹿島アントラーズと横浜F・マリノス。

 そしてもうひとつが、サガン鳥栖だ。

 1999年のJ2創設とともにJリーグに参戦した鳥栖は、J1昇格が2012年と、"J2オリジナル10"のなかでは最も昇格に時間がかかった。だが、以来一度もJ2へ降格することなく、J1クラブであり続けている。

 最近では2018~2020年とふた桁順位が続いていたが、昨季は一転、序盤戦では首位争いにも加わるなど、7位に躍進。J1在籍は今季で11シーズン目を迎えた。

 鳥栖はこれまで、クラブの存続に関わる経営問題が現在進行中のものも含めて何度か表面化してはいるが、ことピッチ内に限って言えば、Jリーグ史上屈指の優秀クラブと言ってもいいだろう。

 今季もここまで4勝1敗7分けの勝ち点19で、5位につける健闘を見せている(5月8日開催分終了時点)。

 とはいえ、時間を3カ月ほど巻き戻せば、今季開幕を前に、鳥栖の前評判は決して高いものではなかった。

 とにもかくにも、主力選手の流出が相次いだからである。

 昨季のチームMVPとも言うべき活躍を見せたMF仙頭啓矢(→名古屋グランパス)をはじめ、チーム得点王のFW山下敬大(→FC東京)、アカデミー出身で生え抜きのDF大畑歩夢(→浦和レッズ)らが、次々に他クラブへ移籍。

 昨季途中に移籍したMF松岡大起(→清水エスパルス)も含めれば、レギュラー格の選手のうち8人も、鳥栖を離れたことになる。チームがほとんど丸ごと入れ替わったかのような事態は、尋常なものではなかった。

 その一方で、今季の新加入はというと、昨季J1の下位クラブやJ2クラブからの移籍組、あるいは大卒ルーキーが中心だったのだから、大幅な戦力ダウンと見なされるのも、不思議なことではなかった。

 ところが、である。

 今季から指揮を執る川井健太監督に率いられた鳥栖は、開幕戦から7戦負けなし(2勝5分け)の好スタート。昨季同様、選手同士がうまくスペースを作り、使う感覚を共有しながら、小気味よいサッカーを繰り広げている。

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