高校サッカーの「寮生活」が激変。洗濯は業者、1人部屋でプライベートも確保...選手はその充実ぶりで学校を選んでいる (2ページ目)

  • 森田将義●取材・文 text by Morita Masayoshi
  • photo by Morita Masayoshi

強豪校の寮は充実化の一途

 その代表格と言えるのが、選手権に4度出場し、昨年はインターハイベスト8まで進んだ岡山学芸館高校(岡山県)だ。

 これまでの寮が手狭となったため、2017年4月に野球場とサッカーグラウンドに隣接する場所に「瀬戸内占春寮」を建設。各学年20名ずつ計60名、野球部と併せて120人が共同生活を送っている。

 寮にはミーティングスペースとしても使用できるきれいな食堂もあり、トレーニング後すぐに食事が摂れる。また、運動後の疲労をとるため交互浴ができる大浴場や、練習試合に来たチームが宿泊できるスペースも備えている。

 コロナ禍でオンライン授業が増えたため、今では当たり前になっているが、自チームの試合やJリーグ、海外サッカーを視聴するため、いち早く寮にWi-Fiも導入した。

 選手が暮らす部屋は4人1部屋ではあるが、ベッドの下段が勉強机などの個人スペースになっており、カーテンなどで区切ることでプライベートな空間も確保できている。

「練習参加に来た選手で寮を希望する選手には案内しますが、なかなかこれだけきれいな施設はないので、親御さんとともにビックリされます」と口にするのは高原良明監督だ。寮費は他チームよりも高めだが、新たな寮ができてからは県外からの入学希望者が増えたという。

 2019年度から2年連続で選手権ベスト4入りを果たした帝京長岡高校(新潟県)も、選手の成長を考えた寮を新設したチームの一つだ。これまで県外から来た選手は複数に分かれた下宿先で生活していたが、全員までスタッフの目が行き届かず、食事やコンディショニングといった部分は選手の意識任せになっているのが課題だった。

 だが、日本一を獲るためそうした私生活の改革に着手。2021年頭には学校近くにサッカー部専用の食堂を作り、自宅生も含め練習前後に補食を摂れる環境を整えた。4月にはサッカー部専用の寮も完成したが、こちらは睡眠にこだわった設備にしたのが、特徴だ。

食事をしっかり摂れる環境を整えた帝京長岡高校食事をしっかり摂れる環境を整えた帝京長岡高校この記事に関連する写真を見る 夜にスマートフォンやPCから発するブルーライトを含む明るい光を浴びると脳が昼と判断し、眠れなくなると言われるため、夜10時以降は室内への電子機器の持ち込みを禁止。充電は廊下でできるように建物が設計されている。

 睡眠時間を確保するため、洗濯にも工夫が施されている。寮生は洗濯機が空かないため、寝る時間が遅くなるケースも多いが、帝京長岡では平日の洗濯は代行業に依頼。登校前にランドリーバックに洗濯物を入れると、業者が各部屋の洗濯機に入れ、洗濯後は選手それぞれの部屋に干してもらえる。

 授業がなく時間に余裕が生まれる土日は自らが洗濯を行ない、寮生活のメリットであるひと足早い社会勉強の経験もさせているのもポイントだ。「大事なお子さんを預かっている以上、コンディショニングの面ではプロに近い環境を整えてあげたい。学校生活を大事にしながらも、サッカーに集中できる環境を作っていきたい」と話すのは、古沢徹監督だ。

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