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イニエスタ・ワールド開幕。一瞬でヴィッセル神戸のコンビネーションは活発になった

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

「30分間」

 この日、アンドレス・イニエスタに許された時間だった。故障あがりで無理はできない。ケガを再発させず、最大の力でプレーできる。そのための時間は限られていた。しかし、"ピッチの創造者"イニエスタが試合を動かすのには十分だった。

 浦和レッズ戦の後半18分から出場したアンドレス・イニエスタ(ヴィッセル神戸)浦和レッズ戦の後半18分から出場したアンドレス・イニエスタ(ヴィッセル神戸)この記事に関連する写真を見る 2月23日、埼玉スタジアム。ヴィッセル神戸は、浦和レッズの本拠地に乗り込んでいる。アウェーでの開幕戦を落としたばかり。故障を抱えるイニエスタを先発で使えない状況は続いていたが、連敗は避けたかった。

 立ち上がり、神戸はロシアW杯の日本代表5人(大迫勇也、武藤嘉紀、山口蛍、酒井高徳、槙野智章)を擁する個人の力で、一進一退の攻防に持ち込んでいる。前半7分には大迫がエリア内で倒されてPKを獲得。野次や怒号が行きかう異様な光景のなか、これを武藤が蹴っていったんはGKに止められたが、押し込んだまま大迫が左コーナー付近でボールをキープし、山口が左サイドを抜け出してどうにかボールを残すと、武藤が角度のないところから浮き球をボレーで叩き、GKの頭上を破った。

 しかし、その後の神戸は後手に回っている。ボールがつながらず、失っては攻撃を浴びる展開。12分にはカウンターから右サイドを破られ、松崎快に同点弾を浴びる。19分にも完全に押し込まれる展開で与えたCKを、ニアでフリックされると、ファーでも柴戸海を捕まえきれず、逆転弾を許した。

 神戸は4-3-1-2のようなシステムで、イニエスタが入るべきトップ下には、かつてFCバルセロナで華々しいデビューシーズンを戦ったボージャン・クルキッチが入っていた。しかし、イニエスタの代役など誰にもできない。チームとしての戦術的練度の低さを露呈し、浦和と比較しても機能性は乏しかった。自陣を蹂躙され、松崎、江坂任などに何度も決定機を与えていた。

「ボールの動かし方などは、やっぱり(浦和は)成熟していた」(槙野)

 しかし、そこをしのぎきると、神戸は気押されないしぶとさを見せる。山口の1本のパスから武藤がゴールを脅かす。そんなシーンが、前半の終盤には何度も作られていた。

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