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小笠原満男にとっての3.11。「東北人魂」は変わらず。被災地からJリーガー誕生を願う

  • 佐野美樹●取材・文・撮影 text & photo by Sano Miki

『特集:東日本大震災から10年。アスリートたちの3.11』
第7回:小笠原満男

 突然の大きな揺れは、まるで「忘れないで」という忠告のようだった。

 東日本大震災からちょうど10年が経とうとしていた時に、その地震は起きた。2021年2月13日23時7分ごろ、福島県沖を震源とするマグニチュード7.3の地震が発生。宮城県と福島県で震度6強を観測した。

「震災は忘れた頃にやってくる、って言葉があるけど、忘れているわけではなくても、こういうことがあるたびに、あらためて防災意識を思い出す。そんなきっかけになったかなと思っています」

被災地の子どもたちとボールを介して触れ合う小笠原満男被災地の子どもたちとボールを介して触れ合う小笠原満男 現在、鹿島アントラーズでテクニカルアドバイザーとして働いている小笠原は、現役引退後、スクール、ジュニア、ジュニアユース、ユースと、さまざまな育成年代の選手たちを指導している。近況を尋ねると「練習の用意をしたり、試合の映像を見たり、スカウティング映像を見たり、会議に出たり......大変だね! 働くってのは」と、小笠原は冗談っぽく笑った。

 それから、「でも」と続けた。

「選手時代、津波の映像を子どもたちに見せるために、いろんなところから映像を引っ張ってきて、切ったりつないだりして編集するのを、クラブのスタッフに教えてもらいながらずっとやっていたんです。それが今、試合の映像分析とか、そういう編集作業をすることがあるので、意外なところで意外なことが役に立ったというか。やっておいてよかったなって実感しています」

 小笠原は震災後から、防災意識の重要性について、数え切れないほどの講演をこれまで行なってきている。声をかけられれば全国どこにでも出向いたし、子どもたちにはとくにしっかり胸にとどめておいてほしいと、自身が足を運ぶサッカー大会などでは必ず、東日本大震災の映像を見せながら丁寧に防災における知識を説いてきた。それは、小笠原が現役を引退した今でも変わっていない。

 ふりかえれば、小笠原にとって東日本大震災からの10年は、東北サッカーの復興・発展と、防災意識の普及に奔走し、ひたすら震災と向き合い続けた10年だった。

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