中村憲剛から後継者・大島僚太への言葉。「彼がいるから僕も輝けた」 (3ページ目)
それゆえに導入した3トップによる新スタイルは、試合後のインタビューで鬼木監督が「チャレンジ」という言葉を多用したように、大きな挑戦だったはずだ。
ともすれば、これまで培ってきたものが崩れ落ちる危険性もあった。だが、コロナ禍のハードスケジュールの中で、若手の台頭を促しながらスタイルを確立していったのは、鬼木監督の優れたマネジメント能力の賜物だろう。
そしてその"超"攻撃スタイルの中心で攻守に存在感を放ったのは、紛れもなく大島だった。
試合終盤に象徴的なシーンがあった。大島に代わって中村憲剛がピッチに立つと、大島は自らのキャプテンマークを外し、ぎこちない手つきで中村の左腕に巻いた。
「僚太が入ってきた頃のことを思い出した。成長していく姿を見てきたので、あの場面はちょっと感動しましたね。育て方が間違ってなかったなと(笑)。もともと優しい子で、選手としてもすばらしいし、彼がいるからこそ、ここ5年くらい僕も輝くことができた。そういう意味でも感謝しています」
今季かぎりで引退する中村は、その場面を感傷的に振り返った。おそらく中村にとって、大島は自身の後継者であり、18年間在籍した心のクラブを託すことのできる存在として認めているのだろう。
「心置きなく、先に進める」
中村のいない"アフター憲剛"の川崎で、大島が新たなバンディエラとなる。
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