名門エスパルスの復活に何が必要か。不敵な19歳の躍動に見た希望の光

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • ヤナガワゴーッ!●撮影 photo by Yanagawa Go

 2020年シーズン、名門・清水エスパルスは苦難に喘いでいる。

 期待されたピーター・クラモフスキー監督の采配は裏目に出た。リーグ戦は第25節終了の時点で3勝17敗5引き分け、失点は最多の54。最下位を這いずり回り、解任という結果になった。

 クラモフスキーは攻撃に殉じるような戦術に革新性があったものの、現実性に欠けていた。例えばプレスがかかっていないところでラインが高く上がって失点を喫するなど、守備の乱れを招くことになった。攻守の歯車が外れ、理想は混乱の渦に消えた。

 クラモフスキー自身、コーチ歴が長く、監督という結果で生き抜くキャリアについてはほぼ一歩目だったということも災いしたかもしれない。横浜F・マリノスを優勝させたアンジェ・ポステコグルー監督と違い、チームを勝利する集団にできなかった。選手も負け続けたことで自信を失ったようなプレーが増え、悪循環を引き起こしたのだ。

 クラモフスキー解任後、新たに平岡宏章監督が就任した。以来、3勝1敗。成績的には、目に見えて持ち直している。名門、清水は復権を果たせるのか?

横浜FC戦で金子翔太の先制ゴールをアシストした鈴木唯人(清水エスパルス)横浜FC戦で金子翔太の先制ゴールをアシストした鈴木唯人(清水エスパルス) 11月25日、ニッパツ三ツ沢球技場。清水は横浜FCに敵地で挑み、1-3と勝利を収めている。前半は清水のショータイムになった。5分に金子翔太,6分にジュニオール・ドゥトラと立て続けに得点し、38分にも竹内涼が追加点を決め、0-3と半ば勝利を手中にした。

「いい守備からいい攻撃を」

 それが、清水のお題目になっていた。まず、攻撃に無理に枚数を掛け過ぎない。相手のビルドアップを許さないプレッシングを見せ、それが攻撃につながった。また、自陣に侵入された時も、センターバックを中心に堅い守りを見せ、その安定感がビルドアップの丁寧さにもつながっていた。そして守備の安定が、攻撃的才能を持った選手を後押ししたのだ。 

 この日、ピッチで最も輝きを放ったのは、2トップの一角に入った鈴木唯人だった。

 鈴木は19歳の高卒ルーキーながら、ボールを受け、運ぶ様子は泰然とし、不敵さすら映る。試合開始直後には前線でボールを受け、前を向いて寄せの甘さを見抜くと、右足を躊躇わずに振り切った。

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