過去の数字から読み解く。今季J1で「降格なし」が与える影響は (2ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • photo by Kyodo News

 Jリーグの中断期間は、すでに2カ月を超えることが確定し、新たに組まれる試合日程次第では、全クラブに公平なリーグ戦が開催される保証がない。最悪の場合、すべての試合を実施できない可能性すらある。実際、Jリーグは今季リーグ戦の成立条件を、リーグ全体で75%以上、各クラブで50%以上の試合が実施された場合とし、全日程を消化できないケースも想定している。「降格なし」は、そうした前提を踏まえたうえでの特別措置である。

 J1、J2には、それぞれのカテゴリーに残留することが最大目標だったクラブも当然あり、そうしたクラブにとっては、現在のようなサッカーに集中しにくい環境のなかで、ひとまずの朗報であろう。当然の配慮とも言える。

 とはいえ、「降格なし」は、非常に大きなルール変更である。特にJ1は、近年実力が拮抗しており、多くのクラブを巻き込み、残留争いが繰り広げられることも多い。上位と下位とに比較的力の差があるJ2に比べ、残留争いが熾烈になりがちだ。

 降格の心配がない今季は、選手がプレッシャーを感じず、思い切ったプレーができるのではないか。いや、逆に残留争いの緊張感がなくなり、選手はプレーの質が落ちるのではないか。そんな声が聞こえてくるが、はたして「降格なし」は、今季J1にどんな影響を与えるのだろうか。

 過去のシーズンを振り返り、J1からJ2への降格の有無がもたらす変化を探ってみたい。

 1993年に全10クラブでスタートしたJリーグは、翌1994年以降、新規参入クラブを加え続け、1998年には18クラブまで増加した。Jリーグはさらなる増加に対応するため、翌1999年からJ2を新設。それにともない、J1を16クラブに減らすべく、1998年のリーグ戦終了後、J1参入決定戦(プレーオフ)を行ない、降格クラブを決定した。これがJリーグの歴史における降格制度のスタートである。

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