2020.03.27

ラモン・ディアスのシュートが、
わかっていても止められなかった理由

  • 後藤健生●文 text by Goto Takeo
  • photo by AFLO

 リオネル・メッシ(バルセロナ/アルゼンチン)は巧みなドリブルで相手DFのバランスを崩して決めるプレーが得意だし、最近の久保建英(マジョルカ)のゴールもドリブルを使ってシュートコースをつくる形が多い。

 ラモン・ディアスはシュートのうまさが際立つプレーヤーだった。

 100%フルパワーの強烈なシュートではないが、GKには届かない絶妙のコースを狙い、GKの反応のタイミングをズラした技巧的なシュートが彼の持ち味だ。

 ディアスは「左足の魔術師」とも言われていた。彼の得点のほとんどがその左足から生まれたからである。そのことは相手DFも知り尽くしているから、当然彼の左足を防ぎに来るし、GKもシュートが左足から放たれることを知っている。

 だが、それでもディアスの左足から繰り出されるシュートは止められなかった。

 たしかに、ディアスの左足は輝いていた。では、彼の右足はただの棒だったのかといえば、そうではない。彼の左足から正確無比なシュートが生まれたのは、右足のワンタッチで正確にボールをコントロールして、もっともシュートしやすいポイントにボールを置くことができたからなのだ。

 身長は170センチそこそこ。取り立ててスピードがあるわけでも、フィジカルの強さがあるわけでもない。日本人の中に入っても平均的なサイズのディアスは、「止めて、蹴る」の技術を究めることによってあれほどのゴールを量産してきたのだ。

 Jリーグで、もっと長く見たかったプレーヤーのひとりである。

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