久保建英の穴は8割方埋まった。FC東京優勝へのカギを握るナ・サンホ (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 久保がスタメンを飾っていたこれまでは、交代選手としてピッチに立つことが多かったが、片鱗は随所に見せていた。まさにFC東京浮沈のカギを握る選手として、第16節ベガルタ仙台戦から先発出場を続けている。

 G大阪戦では、その彼の躍動で同点ゴールが生まれると、滑り出し好調だったG大阪は防戦一方になった。

 久保は主に、4-4-2を敷くFC東京の右サイドハーフ(SH)としてプレーした。左の東慶悟が下がり目に位置したのに対し、久保はそれより少し高めの位置にポジションを取った。右サイドで構える左利きのアタッカーであった久保に対し、G大阪戦のナ・サンホはその逆、左サイドで構えた。

 この久保とナ・サンホの入れ替えを助けたのが、キャプテン東慶悟のユーティリティ性だ。彼が左SHから右SHに回ったことで、ナ・サンホが最適な環境でプレーすることが可能になったわけだ。FC東京というチームの特性を語る時、これは見逃せないポイントになる。

 ナ・サンホと久保。目に新鮮なのはナ・サンホだ。左サイドで構える左利きは、世界的に見て少数派だからである。左利きのアタッカーの多くはいま、久保のように右サイドでプレーする。アリエン・ロッベン、リオネル・メッシ、モハメド・サラーしかりである。

 かつては、左利きのアタッカーは左ウイングをするものと相場は決まっていた。代表的な選手はライアン・ギグスになるが、ロッベンもユーロ2000の頃は左ウイングでプレーしていた。

 日本でいえば中村俊輔だ。トルシエ時代の彼は、左ウイングハーフでプレーしたものだ。それがセルティック時代になると、すっかり右サイドの選手に変わっていた。

 左利きは右で。右利きは左で。10年と少し前からこれが定番となった。本田圭佑、堂安律、三好康児、それに久保も含め、日本代表でプレーする左利きも右サイドが主流だ。

 その下で構える右SBは右利きだ。その上でプレーするウイング的な選手が左利きであっても、右利きのSBと連係すれば、縦に抜きにくいというそのデメリットは解消される。逆に左利きの右ウイングが、切れ込んでシュートを放つ体勢に持ち込みやすくなる。かつてよりSBの基本ポジションが高くなったことと、それは密接な関係があるとされる。

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